「偉大なるヨーロッパ連合〜未来からの警告」

舞台は2030年のEU崩壊後のヨーロッパ。飛行機で隣に座った少女に「EUって何?」と聞かれた
“歴史学者”がその理念、歴史を語り、EUが果たした偉大な功績を少女に話して聞かせるという
なかなか面白い半分ドラマ仕立ての作品。

製作はイギリスのプロダクションだから、スコットランドの独立問題とか民族政党の台頭とか
イギリスのEUの脱退について国民投票が念頭にあることは間違いない。
今、2014年の現実を踏まえているわけだが、ドラマ上の設定が非常に面白い。

作品中では、まず2020年にイギリスがEUを脱退。その後、ギリシャ、スペインが経済破綻。EUは崩壊している。
老齢の歴史学者がかつて使用されたEUの共通パスポートを少女に見せながら
「このパスポートを5億人の欧州人が使っていたこともあったんだよ」と回顧する場面は泣ける。
要するに、この番組はEUを戦争の惨禍から産まれた人類の知恵の結晶のようなものと捉えているのだ

この番組の主張は非常に明快だし、おおむね正しいとは思う。
ただ出演する2014年の人々は「移民は働きもせず、私たちの税金を浪費している」とか
「昔はこの街も避暑地として賑わっていたのに、EUのせいで国境がなくなり海外へ行くようになって街が衰退した」とか
とにかく不平不満が渦巻いていて、そう簡単にそうした苦悩や憎悪が解消されるとも思えない。
安易な選択をすると、2030年はこんなにヒドい欧州になってますよというディストピアを見せて脅してどうなるのか?
という気がしないでもないが。