民族浄化と新帝国主義を標榜し膨張するナチスの非人道的本質を見抜き
ナチスの侵略に徹底的に抵抗し、自国民を鼓舞し、イギリスを最後まで守り通したチャーチル
と、書くとまるで手放しで彼を賞賛しているようだが、私のこのようなチャーチル観は
この作品を観ると、正直に言ってどこか間違っていたんじゃないか?と揺さぶられてしまう

チャーチルの政治信念の基本をなすものは貴族主義であって
選ばれたものが、その他のものを統治するという伝統と観念であった
チャーチル夫人が「夫は選挙運動以外で地下鉄に乗ったこともない」と証言していたが
ようは、一般国民とは異なる浮世離れした人生を送った骨の髄まで英国貴族だったのである

チャーチルは若い頃から炭鉱労働者と対立し、労働紛争には厳罰で対峙した
その貴族主義を原動力とした彼の戦闘力が、ナチスドイツへ向けられたとき初めて彼の能力は最大限に開花したのである
では、アトリーが首相であったらナチスを撃退することができただろうか、どう考えても無理であろう
確かにチャーチルは1945年の選挙で敗北し、首相の座を追われることになる
「平和に敗北した」かもしれないが、ナチスドイツには「勝利した」のだから、余りあるほどそれで十分ではないか