いわゆる「契約自由の原則」にも例外がある。

自賠責保険の加入は自動車損害賠償保障法で義務付けられているが、契約する保険会社は選べる。
自賠責保険は、「広く交通事故の被害者を救済」する為のものであり、「公共の福祉」に適合するものと考えられる。
よって、「契約の自由」はある程度制限される。

電気事業法やガス事業法、水道法などでは、電力会社などへ消費者への供給(契約)を義務付けているが、
これは、これらの事業が地域独占・寡占事業であるため、消費者がこれらの事業者から供給(契約)を断られると
生活が成り立たない為、このような仕組みになっている。
これは、「国民生活の安定」を考えれば、当然に「公共の福祉」に適合するものと考えられる。
よって、「契約の自由」は制限される。

さて、問題はNHK受信契約だが、放送法の契約義務の規定は、いわゆる「公共放送」の維持の観点からは、
一見「公共の福祉」に適合しているように思えるが、「公共放送」の「受益者」である「NHK視聴者」には
当然に契約義務があるとはいえ、放送法の規定は「(日本放送)協会の放送を受信することのできる受信設備を設置」した
事実だけを根拠に一律に「NHK視聴者」でもない一般テレビ視聴者(受信設備設置者)にまで契約義務を課しているものであり、
また、一般テレビ視聴者が「NHKだけが映らないテレビ(受信設備)」などを入手する事は事実上困難である事情などを
鑑みれば、この規定は、一般テレビ視聴者の「NHKを見ない権利」や「視聴テレビ番組選択権」などの、
いわゆる「幸福追求権」を侵害している側面があり、これらの一般テレビ視聴者にまで契約を強制し受信料を強制的に支払わせ、
それによってNHKの運営を維持するというのは、たとえ「公共放送」といえども「権利の濫用」にあたり、
「公共の福祉」には適合しないものと考えられる。。
よって、放送法第64条第1項の規定は憲法13条に違反するものであると考えるのが相当である。