イ 受信料の支払い請求について
 上記アの受信契約締結承諾の意思表示を命じる判決が確定した場合には、
原告と被告の間に、契約種別を衛星放送とし、別紙1「日本放送協会放送受信規約」
を内容とする放送受信契約が成立することになり、被告は、同契約に基づいて、原
告に対し、受信料支払いの義務を負うことになる。
 この点について、原告は、別紙1「日本放送協会放送受信契約」(現行受信規約)
5条1項に「放送受信契約者は、受信機の設置の月から、(中略)放送受信料(消
費税及び地方税を含む。)を支払わなければならない。」と規定されていることを根
拠として、原告及び被告の間では、当該受信契約は受信機の設置した日に遡って効力
を有し、被告は、当該受信契約に基づき受信機の設置の月から受信料を支払う義務を
負うこととなる旨主張する。しかし、債務関係の確定日と契約成立の日にずれが生ず
ることの根拠を上記規約のみに求めることは疑問であり、加えて、放送法64条1項
(平成22年改正改正前放送法32条1項)自体の解釈として、現在、契約締結義務
の履行につき特別の担保手段がないこと、そもそも個々の受信者対応如何によって受
信料債務の成立時点が異なってくることを法が予定しているものとすることも合理的
でないこと等を考慮すると、同条項が、現実の契約締結は契約関係確定手続であり、
従って、その効果が、受信設備設置の時点に遡るというシステムを前提としているも
のと解するが相当である。
したがって、いずれにしても、被告は、原告に対し、受信設備設置の
時点から前期受信契約に基づいて定められた受信料を支払い義務を負っているところ、
前期認定、(請求の原因3掲記の事実)の通り、被告は、遅くとも受信機設置連絡日
である。平成21年1月13日までには肩書住所地に衛星系によるテレビジョン放送
を受信できるカラーテレビジョン放送受信機を設置しているから、被告は、遅くとも
受信機設置連絡日以降、原告に対し、受信料の支払義務を負っていることになる。