NHK不祥事 公共性への意識が足りぬ
産経新聞 2016.1.15
http://www.sankei.com/column/news/160115/clm1601150001-n1.html

NHKや子会社で不祥事が相次いでいる。自らの公共性をどれだけ認識しているのだろうか。

今年に入り危険ドラッグを所持していたとして同局アナウンサーが逮捕された。子会社の「NHKアイテック」では昨年から、職員がカラ出張や架空発注によって多額の現金を着服していたことが発覚した。

NHKは平成16年に制作費着服などの不祥事が相次ぎ、これを契機に経営改革にあたっていたはずだ。そこで問われたのも、職員のコンプライアンス意識や、現場任せで不正をチェックできない管理体制だった。この教訓が生かされていない。

経営委員会の浜田健一郎委員長は記者会見で「受信料で支えられている自覚が欠如している」と語り、グループ全体の問題として綱紀粛正に言及した。

視聴者からの受信料という安定収入に甘え、モラルやコスト意識の欠如を招く体質は、不祥事の背景として何度も指摘されてきたことである。

子会社が起こした問題でも、当然、NHKの責任は免れない。グループ間のなれあいはなかったのか、問題を厳しく検証し、改革にあたってほしい。

NHKは、放送事業者、とりわけ公共放送として何より公正な番組作りが求められている。

看板番組「クローズアップ現代」の問題では昨年、「過剰な演出や視聴者に誤解を与える編集が行われた」としながら、やらせを認めなかった。視聴者の一層の不信を招くものでしかなかろう。

籾井勝人会長には、責任が極めて重いことを改めて自覚してもらいたい。

2年前、元商社マンの籾井氏が起用されたのは、内部昇格では困難な改革を、外部の人材によって断行するためである。それが空回りしていないか。

子会社の約350億円の土地取引をめぐり、籾井氏ら執行部が経営委員会に情報を伝えていなかったことも、お粗末にすぎる。

組織上は経営委がNHKの最高意思決定機関だが、そのメンバーは外部有識者だ。執行部との信頼関係と緊密な連携が欠かせないことは言うまでもない。

視聴者、国民の理解と信頼を得られるよう透明性ある運営にあたってもらいたい。NHK改革はいまだ途上である。