篤姫は、普遍的な英雄伝あるいは成長物語としてのドラマでもある。
スターウォーズは、ジョージルーカスが古今東西の神話における英雄伝説の物語構造
を分析して作り上げた壮大な叙事詩と言われている。ジョージルーカスは、スターウ
ォーズについて、若者が自らをとりまく環境から抜け出し新たなることに挑戦する中
で世界を切り開いて行く自立と成長がテーマの物語と述べている。
篤姫も類似の物語構造をもっている。
たとえば、老師の幻影が暗示する「その娘、江戸に連れてまいる」という言葉が示す
天命の子としての始まり。
篤姫の主要登場人物の中で虚構キャラは菊本だけだが、菊本は、使命を与えられた主
人公が日常から旅立つ際に躊躇して決心できないときに、後押しをして旅立つきっかけ
をつくるための定石キャラと考えられる。
菊本はおのれの死をもって、主人公が後戻りできないようにした。
篤姫が御台所になる決心をした後に言う「橋を渡ったのみならず、その橋に火をつけ
燃やしてしまうほどの覚悟」という台詞。橋を渡るというのは英雄が、日常の世界と異
次元の世界の境を越えるという意味がある。
スターウォーズでは、主人公は最後に大いなる父であるダースベーダーと対決するが、
篤姫の場合は、それは亡くなった斉彬の意思を受け継いだ西郷、あるいは篤姫の故郷薩摩
そのものがそれに相当すると考えられる。