X



こんな天地人が見たかった!5
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0233日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/09/13(火) 22:49:20.60ID:qyBzN+px
第四四話「天下一統」(61)

「おお。そういえば、直江殿。これをご覧あれ」
蒲生氏郷が、漆塗りの箱から絵図面を出して見せてくれる

「黒川に造る新しい城と城下町の計画書じゃ。黒川の名前も若松と変えるつもりじゃ」
大層な城じゃのう
「七層の天守閣を築くつもりじゃ。それにしても、伊達は、全く手を入れずじまいじゃった
ようじゃな」
「伊達殿は、天下に望みがある人じゃから、小成に甘んずる気がなかったのじゃろうて」
浅野長吉、なかなか穿ったことを言う

「新しい城造り、新しい都市造り、胸弾むような楽し気なお仕事でございまするな」
「そうじゃ。なにもかも思うがままじゃ。わしは、何百年先も栄える都市を造るつもりじゃ」
関白殿下も城を造るが、民の負担は考えないのじゃろうか。
勝頼公は、新府城築城のため重税を課して、滅亡の原因をつくったのじゃが
0234日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/09/16(金) 22:51:32.81ID:14NLKZP7
第四四話「天下一統」(62)

「楽市楽座で商人をかき集めて、奥羽第一の大都市にするつもりじゃ。
伊勢・松坂よりも商人を呼び寄せるつもりなのじゃ」

「上方の武将は皆さま、城造りの名手でございまするなあ」
兼続がつぶやく
「これは信長公じこみじゃ。みな信長公の模倣なのじゃ」
蒲生氏郷、隙があれば、信長公の話をしたがる
0235日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/09/21(水) 23:11:18.12ID:4M/j3SlZ
第四四話「天下一統」(63)

「まったく信長公は、乱世を終息させるために天が遣わしたお方じゃったな」
蒲生氏郷、酔ったのか、独白する
「信長公は、民の望むことをよくご存じじゃった。
商業を盛んにするため。街道の整備に尽力されたのじゃ」
ふうむ。
「信長公は、道を三種類に分けた。一番大きな道は本街道で、三間二尺幅じゃ」
相当広いのう
0236日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/09/26(月) 23:06:46.44ID:/lOVBTcQ
第四四話「天下一統」(64)

「信長公は
本街道 三間二尺(約6,5メートル)
脇街道 二間二尺(約4,5メートル)
在所道 一間  (約2メートル)
と、道路の規格をお決めになり、整備に力を尽くされた。」
ほおお。
「信長公は、商業が富を生むこと、商業のためには交通網が必要であることを
生得に理解されておられたな」
ふうむ。
「そういえば、織田の旗印は永楽銭でござったな。
信長公は銭の力で天下を取ろうとされておったのじゃろうか」
「銭のもつ不思議な力に。あやかりたいとおもわれたのではないかのう」
確かに、毘沙門天とか孫子とではなく、明銭を旗印にするのは、変わっておるのう
しかし、征明の戦で、織田勢の旗印を見れば、明の軍勢は戸惑うじゃろうな
永楽帝に弓引くことになるからのう、やや、それはないか。
織田信雄様は、改易されたからのう
0237日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/02(日) 22:59:54.82ID:pN/ITDpY
第四四話「天下一統」(65)

「もともと信長公の家は、尾張下四郡の守護代の三家老のひとつにすぎなかったのに
津島湊を金蔵にして勢力を伸ばしてこられたのじゃ。
木曽川の河口に位置し、伊勢の海運の中心であった津島湊を金蔵にした信長公の御父
上様・信秀公は、皇居の築地修復のため、四千貫文を献上しておる、それくらい富強
じゃったのじゃ」
蒲生氏郷、織田の譜代の家臣のように詳しく話す
「富強で言えば、上杉も負けてはおるまい。直江津や柏崎湊から、都へ運ばれる越後
上布や青そにかけた関税が年間四万貫と聞いておる」
浅野長吉、意外と博識のところを見せる
まったく、なんでも知っておるのう
「四万貫!関東や北陸への連年の出征ができたのは、そのせいか」
蒲生氏郷も感心したような声を出す
0238日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/05(水) 22:51:11.79ID:8QwJezql
第四四話「天下一統」(65)

「謙信公は、数万両の遺産を残された。それをいち早く確保して、上手に遣って
内戦に勝利されたのが、ここにおられる直江山城守様じゃ」
浅野長吉、酔ったのか、ふざけている
しかし、何から何まで、よく知っておるのう。

「ところで、織田信雄様は、どうなるのでござましょう」
これ以上、昔話をされても、藪蛇なだけと思った兼続、話題を転換する
0239日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/10(月) 23:05:35.57ID:jzU1iKMj
第四四話「天下一統」(67)

「上杉家の内戦は、景勝公と北条から養子に入った景虎殿の争いになったのじゃが
北条の同盟国であった武田の大軍が、越後に攻め込んできた。その時、景勝公は、
武田に金子を贈って、味方にしたのじゃ。そうじゃろ、直江」
浅野長吉、なれなれしい。兼続、にこにこ笑うも取り合わない。

「信雄様は、佐竹殿の預かりであったが、この後、出羽に流されると聞いたが」
「能を踊れば、天下一のお人なのじゃがのう。兵事はからきしじゃな。信長公の
御子息としては不出来なお人じゃな」
「信長公に勘当されそうになったこともあったなあ」
「独断で伊賀を攻めて、大敗したときのことじゃろう」
浅野長吉と蒲生氏郷、二人で盛り上がっている
不覚人なのじゃろうか
0240日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/12(水) 22:57:21.62ID:mCDN1Y6D
第四四話「」天下一統」(68)

「織田信雄様がおられなければ賤ケ岳の戦でも、関白殿下は名分が立たなかった
のではございませぬか。いわば。関白殿下の覇業に協力されたお人なのに…」
「協力したのではない。利用されただけじゃ」
浅野弾正長吉、さらに辛辣になる
「信雄様は、もう少し、気をつかうべきじゃったな。
徳川殿を見習うべきじゃ。徳川殿は、領内の城をすべて提供し、無理やり小田原
攻めを強行するくらいに、気を遣っておられるのに」
蒲生氏郷も、口調が冷たい
0241日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/13(木) 23:16:14.49ID:WD7VyM4l
第四四話「天下一統」(69)

「関白殿下は、天下一統を完遂したことで、お心に変化が生まれたのではありませぬか
以前の関白殿下とは違うようにお見受けいたしまするが」
兼続、言葉を選びながら探りをいれる
「信長公に似てきたのう」
「信長公に似てきたというか、絶対権力者は孤独で不安なものじゃ」
0242日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/14(金) 23:30:07.15ID:sZWzn1Gw
第四四話「天下一統」(70)

「山上宗二も、小田原で斬られておる。耳鼻削がれて斬首されてしもうた」
蒲生氏郷、憤懣やるかたない口調で愚痴る
「宗二は、茶道には妥協のない男で、関白殿下にも直言するもので何度も追放さ
れたのじゃが、今度はきられてしもうた」
「利休様も命乞いされたのじゃが、関白殿下は、おゆるしにはならなかった」
「秀長さまが、参陣されておられれば、関白殿下を説き伏せて、助けてくれたかも
しれなかったがのう」
浅野弾正長吉も愚痴る

大きな器量で天下を一統された関白殿下じゃが、その自尊心は肥大化し、些細な
反抗も許せなくなっておるのかもしれぬな。
石田のような忠義一途な者たちに囲まれておれば、それが普通と思われるのやも
しれぬ。

やはり、征明の戦に対する反対・反発が大きいことに、お気づきで、機先を制し
て、弾圧して、みなを従わせようとしておるのじゃろうか。
信雄様を改易して流罪に処したのも、一罰百戒を狙ったものじゃろうか
0243日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/19(水) 22:33:09.51ID:2GB8xy71
第四四話「天下一統」(71)

「大谷刑部殿より急使でございまする。仙北で一揆発生いたしました」
やはりなあ。
「通せ」
蒲生氏郷、浅野長吉と顔を見合わせうなづく

「大谷殿配下が検地をおこなっておると、付近の農民が妨害したので、見せしめ
のために数人を斬首したら、逆襲されて、大谷勢、五十人ばかり惨殺されたよう
でございまする」
大谷家の使者が報告する
0244日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/23(日) 20:03:59.43ID:xF8zaBjg
第四四話「天下一統」(72)

「景勝公、旗本を率い春日山を進発、現地に急行しておるとのこと」
おお。
「それがしも、出羽に戻りまする」
兼続が、慌てて辞去しようとすると
「わしは、都に戻るつもりじゃ」
なぜに!浅野長吉が不思議なことを言う。
「あまり大事にしたくないのじゃ。一揆が勃発したからこそ、予定通り行動するのじゃ」
ほお、動揺するところを見せないつもりかあ。
0245日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/25(火) 23:29:51.01ID:c/sYAcNB
第四四話「天下一統」(73)

「どうも、前後左右から一揆勢が接近しておるようでございまする」
景勝の率いる上杉本隊と合流した兼続だが、一揆勢との乱戦に巻き込まれている
「本庄にやられたことを、そっくり返すつもりなのじゃろうか」
景勝、氷のように冷静だ。
「そうかもしれませぬなあ。最上の配下が混ざっておるやもしれませぬ」

しかし、謙信公とともに何十年も戦い続けた百戦錬磨の上杉に対して、
包囲殲滅戦を企図するとは、笑止千万じゃな。

「敵の総数は約二万でございまする」
伝令の声が裏返っている
「これだけの作戦を遂行するとなれば、烏合の衆というわけでもないようじゃな
敵の本陣を探せ」
戦場諜報をとるため、すべての細作が投入された
0246日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/26(水) 23:38:16.84ID:r+NtZ57R
第四四話「天下一統」(74)

一揆の総大将を捕捉して首を取れば、この大軍も四散するじゃろ
無益な殺生は避けるべきじゃ。
0247日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/29(土) 23:59:21.73ID:GGvpLrTb
第四四話「天下一統」(75)

「ご家老は、敵を甘く見すぎておる。謙信公が一番苦戦したのは、武田ではない。
もちろん北条であるはずもない。北陸の一向一揆じゃ。謙信公は、神仏に願文を
捧げて平定を祈念したことさえあった。」
「しかし、一揆というても、一向門徒のような宗教心もないし、雑賀の鉄砲隊もおらぬぞ
そなたの鉄砲隊で、防ぎ留めながら、敵の司令部を強襲して、敵将の首を挙げる
作戦が一番じゃと思うが」
兼続の作戦に対して上杉の鉄砲隊指揮官・水原親憲が意見具申をする。
「鉄砲も、ほとんどないようじゃし、どうみても調練を受けておらぬようじゃが
それがしは、無辜を殺傷したくないとおもうのじゃが」
「それが、甘いのでござる。敵は、必死でござる。検地で土地を取り上げられた
地侍にとって、こたびの戦いは、絶対勝たねばならぬ戦でございまする
鉄砲隊が防ぎとめることができるとは、思えませぬ」

「そういえば、信長公が長島の一揆を鉄砲隊で殲滅しようとして、逆襲され、庶兄・信広
殿を筆頭に、歴々の旗本数百人が討ち死にしたことがあったのう」
景勝が、軍談研究の成果を披露する
「時間がない。では、どうすればいいのじゃ」
「作戦構想は、このままでよいとしても、われらも死力を尽くさねば、勝てませぬ。
勝てぬというか、生き延びることさえ、難しゅうございまする」
本陣を囮にして、敵将を釣りだそうと考えたのじゃが、いささか巧緻にすぎたか。

「敵将・鍋倉四郎、益田城を出た模様、数千の兵を率いて、こちらに向かっておりまする」
名もなき土民相手の死闘が始まるのか。

「みな、わしの節度に従え。ゆくぞ」
景勝が、本陣勢を率いて、正面から激突する。
兼続も与板衆を率いて、本陣の背後を固める。
「背後からも、敵軍が迫っておる。敵を一歩も通すな。
旗本衆が、敵将の首を取るまで、時間を稼ぐのじゃ」
なんか、川中島の戦に似てきたな。時間との戦いじゃ。
0248日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/30(日) 00:31:24.10ID:zwUrLNeB
第四四話「天下一統」(76)

「撃て、撃て。皆殺しにしろ」
水原の鉄砲隊が、火ぶたを切る。
バタバタ、倒れる一揆勢。しかし、わき目もふらず、次から次へと突っ込んでくる
「一歩も退くな。弓隊、前へ。撃て」
雨のように降り注ぐ、上杉勢の矢。しかし、死体の山を踏み越えて、一揆勢は、
まったく怯まない。みな死兵じゃ
「ご家老、お下がりくだされ。敵兵が迫っておりまする」
「わしも戦う。みな、負けるな。一歩も退くな。」
兼続も、騎馬を率いて、一揆勢に正面攻撃することになった。
「最後の一兵まで戦え。ここを死に場所と心得ろ」
馬上で槍を振るう兼続。敵勢に突っ込んで、敵兵を馬蹄にかける
槍で、敵兵の頭をぶん殴る。顔を突き刺す。
「止まるなよ、動け。離れるな」
叫びながら、戦い続ける
すると、乗馬が突然膝を折る。前に、放り出される兼続。
兼続の乗馬は、前足を斬られたようだ。
「許せ」
愛馬に槍でとどめを刺して、刀を抜く兼続。
大兵の敵兵の手元に機敏に入り、横殴りに首を狙う。
ゴン。
手元が狂い、鎧にはじかれる。
とっさに脇差を抜いて、脇腹を突き刺す。
血潮が噴き出し、兼続の視界が真っ赤に染まる。
「ご家老をお護りせよ。ここを死に場所を心得よ」
0249日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/10/30(日) 22:34:32.43ID:zwUrLNeB
第四四話「天下一統」(77)

「鍋倉四郎の首、岡田十左衛門重治が嫡子治左衛門重貞が討ち取ったり」
おお。
「反撃じゃ。追い散らせ」
生色を取り戻した上杉勢、一揆勢に猛然と襲い掛かる
「益田城、攻略いたしました」
次々と勝報が届く。

ところが一揆勢は、なかなか崩れない。
「御館様、ご苦労様でした」
本陣に戻る兼続
「そなたも奮戦したようじゃな。怪我はないか」
「返り血でございまする」

夕方になって、やっと戦は終わった
「われらが獲った首は一千五百を超えておりまする」
大激戦じゃったな
「われらの被害は、どうなっておる」
「概算で戦死者二百余・負傷者五百と思料いたしまする」
ふうむ。

「一揆勢のものども、死に急いでおるようでございましたなあ」
「これが天下一統に対する地侍どもの反発じゃろう。
居場所がないのじゃ」
居場所。居場所を造るために、征明の戦をするのじゃろうか
0250日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/11/21(月) 23:02:29.28ID:IoxytGlq
第四四話「天下一統」(78)

「庄内でも一揆が勃発いたしました」
おおお。予想通り、自分の家にも火がついた兼続。
佐々の二の舞は避けねばならぬ。
領内を治めきれないと難癖つけられて、庄内を没収され、最上に返還される
ようなことがあると、目も当てられぬなあ。」
「春日山に伝令、増援部隊を編成し、すぐに進発させよと伝えよ」
お船殿が、うまくやってくれるじゃろうが。
0251日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/11/27(日) 21:40:23.76ID:FlpdJjjj
第四四話「天下一統」(79)

「藤田信吉殿、一揆の首謀者・菅野大膳を討ち破りました」
ううむ。藤田信吉、いつものように使える男じゃな
「全軍、藤島に向かえ」
一揆が小規模なうちに、ひとつひとつ潰していかねばならぬ
一歩間違うと、奥羽全体に波及する一揆になるやもしれぬ
九州の一揆のようなことがあるやもしれぬ

「大崎・葛西で一揆勃発いたしました」
一揆の炎は陸奥に波及。小田原に参陣しなかったことを咎められ領地を没収
された大崎・葛西の遺臣が一揆を起こしたのだ。
「浅野殿より、ご使者」
「お通しせよ」

「徳川様、前田様などにも動員令が発令されました」
おお。総力戦となったようじゃな

「戦乱の中、自分の領地を守ってきた地侍も、関白殿下の天下一統政権のもと
では、百姓になるか、新たに任命された領主の下っ端の家来になるしかない。
世の中の変化の速度についていけないのじゃな」
上杉景勝、評論家的だが正しいことを言う


0252日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/11/29(火) 22:47:40.58ID:sY6Sz217
第四四話「天下一統」(80)

「なんとも後味の悪い仕置きじゃな」
「はっ。残念でございまするが、ここで武威を示しておかねば、愚民どもの蜂起
は収まりますまい。ほかの道はございませぬ」

藤島で蜂起した一揆の首謀者・平賀某など十七名を磔にして火炙りにしたのだ

「大崎・葛西の一揆は、猖獗を極めており、奥羽全域に広がる情勢でございまする
庄内さらに越後に波及でもするようなことになれば、目も当てられませぬ」

九州の一揆の話、黒田官兵衛殿に伺った時は、聞き流していたが、実際直面すると
切実な問題じゃ。関白殿下の目もある。北辺の些事を、おおげさにされて、国替え
とか無理難題を吹っ掛けられたら大事になる。
一刻も早く、鎮圧せねばならぬのじゃ。
0253日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/12/11(日) 19:49:25.88ID:Kx6qDTnF
<反省会>

「われらも反省すること、ありすぎるくらいじゃが、
真田丸オーラスでこれでいいのじゃろうか」
「この脚本には適いませんな」
「感性が合わないな。珍しくインスパイアされることが、ほとんどなかったのう
一年間、何やってるのか、さっぱり、わからぬまま終わるな」
「残念じゃが頭が悪い人。二度と見たくないという感想しかございませぬな」
「ハードディスクの容量が勿体ない戦国大河は初めてじゃったな」

「文句をつけだすときりがない。ただ、あまりにも、くだらないから、文句をつ
ける気にさえならぬのう。歴史リアルの先生も大変じゃったと、同情する。
それがしじゃったら、切れて途中でやめるな」
「命が惜しい武士が、大坂城に集うはずがない。実際、前田利政殿のように
参戦しなかったお方もおられる。関ケ原から十四年、市井で朽ち果てること
こそを恐れていたのではないか、父・昌幸殿のように
最後の死に花を咲かせることができて、満足じゃったと思うけどな」
「どうも、根本的に武士の行動様式を押さえてないから、本当にくだらない
話になる。御恩とか、忠義とか、武名とか、どう考えているのじゃろう」
「理解できてないと思いまする。頭が悪いから。
頭が悪い癖に、人と変わったことやらないと、自分らしくないと思っておられ
るんじゃろうけど、思い付きが全部くだらないコントじゃから、つける薬がな
いなあ」
「残念じゃ。今年の初め、すごく期待した、その気持ちを返してもらいたい
本当に、残念じゃったな」

「登場人物が多すぎるのか、人物造形が全くできておらぬから、その場限りの
苦し紛れの演出を一年間見せ続けられる苦痛は半端なかったのう」
「石田三成主役で、加藤清正とか、七本槍の面々と、大谷刑部とか、固定して
話を掘り下げたほうがよかったと思うなあ。あれだけ、豊臣家に焦点を当てる
のなら。真田も豊臣も中途半端じゃ」

「期待しすぎたのじゃろうか」
「真田太平記は、水曜ドラマとして製作された故、お金をかけれてない。
独眼竜政宗以前のドラマじゃから、古いところもある。
それを、大河らしい製作費で再現してくれるだけでよかったのに」
「権利関係の問題があるのかもしれないけど、原作のない話は、脚本家の
先生の能力を超えておる。もともと、無理じゃったな」
「残念じゃ。普通にやってくれれば、面白くなることは、真田太平記で立証
されておるのに」
「白い巨塔だって、名作の誉高い田宮版がありながら、現代風にアレンジして
歴史に残るドラマになったのに、結局、脚本家の先生の、個性というか、功名心が
すべてを台無しにしたな。もう、映画では、この人は使えないし、テレビドラマで
も無理だと思うな」
「史実とか、視聴率とか、エッセイで、いろいろ言い訳するのも、見苦しい」
「真田信繁に固執していたのも、一体何だったんでしょうね」
「幸村になってるし、最初から、幸村でよかったんや」
「徒労感、これに尽きるよ。なんか、人生の一部、無駄にしたような気がする」
0254日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/12/11(日) 22:32:01.65ID:Kx6qDTnF
第四十五話「利休」(1)

「ご家老、わしはどうなるのじゃろう」
天正十八年十月下旬の下越・村上城。
本庄繁長の居城で、本庄と面談している直江兼続である

青菜に塩の本庄繁長、それもそのはず、庄内の一揆を使嗾したという嫌疑をかけ
られているのだ。
「わしが、庄内の一揆を使嗾するはずなど、絶対にない。これは讒言じゃ。
色部の奴が、わしを陥れようとしておるのじゃ」
確かに、出羽の検地を担当させていた色部長真の家臣が聞きこんできた話が
発端じゃが。どうも、おかしい。
「わしは、佐々成政のように、一揆の責任を負わされて、切腹させられるの
じゃろうか」
都に召喚されている本庄、不安でいっぱいの心境のようだ。
「そなたは、上杉の柱石。古志上杉の名跡を継ぐ一門格の重臣じゃ。
上杉の全力を挙げて、そなたは守る」
「ご家老、本当か」

「そなたの三男殿が、元服されたら、それがしの養子にもらい受けよう。
これは男と男の約束じゃ。
しかし、条件がある。
軽挙妄動は、絶対にしてはならぬ。
すべて、それがしの指示に従ってもらいたい」
「ご家老、そこまでお考え下されておるのならば、すべてお任せいたしまする」
「まずは、心配しすぎないことじゃ。御館様もそれがしも同行する。
大船に乗ったつもりで、ゆるりと構えておることじゃ」
0255日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/12/18(日) 23:02:04.07ID:8dhKxDKW
第四十五話「利休」(2)

「そうか。本庄も、こたびは相当戸惑っておるようじゃな」
「本人は濡れ衣じゃと主張しておるまする。実際そうなんじゃとおもいまする」
春日山に戻ってきた兼続、早速お船に相談している。

「伊達と蒲生殿が、諍いを起こして居るようじゃ、
蒲生殿は、伊達が大崎・葛西の一揆を扇動しているとみておるようじゃ。
本庄は伊達と親しい。同じことしておるように、取られておるのではないか」
「成程。最上の陰謀かと思いましたが、伊達との関係を疑われておるせいなの
ですか」
流石、上杉の諜報部門を取り仕切るお船、読みは鋭い

「これは、都で解決すべき話じゃ。わらわも奥方様のお供をして上洛するぞ」
「すべては関白殿下の御心のうちで決せられることとなりましたな。
一刻も早く都に上るべきでございましょう」
0256日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/12/25(日) 23:06:10.57ID:1xJevV/f
第四十五話「利休」(3)

 暮れも押し詰まった十二月下旬、本庄繁長とその息子・大宝寺義勝を伴い、上杉
勢が上洛する。

「関白殿下、こたびの本庄に対する嫌疑、われら上杉家一統、驚愕しておるところ
でござりまする」
さっそく、聚楽第の関白殿下に伺候した景勝と兼続、対面が済んだ後、茶室に招かれ
秀吉にねじ込む兼続である

しかし主人役を喜んで務めている豊臣秀吉、悠々迫らず
「直江、この茶碗はどうじゃ。日本ひろしといえども、いくつもない逸品じゃ」
信玄公は、茶など町人のすることじゃと馬鹿にしておったが、そんなことを
思いながら、仕方なく調子を合わせる兼続
「漆黒のなかに星空が煌めくような景色でございまするな。冬の夜空を映したよ
うな茶碗でございまするな。これが利休好みとか申される名品でございまするか」
「いや、利休好みは、このように端正なものではないなあ。織部などと、歪な素朴な
茶器を趣があると申して、愛でて喜んでおるわ。不健全じゃ」
そんな趣味の話はどうでもよい兼続

「本庄は、上杉の重臣。こたびは御館様も大変心を痛めておりまする」
無口な景勝、ここぞとばかり大きくうなずく
「はは。こたびの本庄の一件、本丸は伊達じゃ。本庄は伊達と親しいじゃろ。
伊達の奴は、葛西・大崎の一揆を扇動して木村を追い出し、そのあとに自分が
居座るつもりのようなのじゃ。蒲生が証拠を握ったと石田より連絡があった
伊達も都に召喚し、処罰するつもりなのじゃ。その、前触れとして本庄は
呼ばれたのじゃ」
「本庄は無実でございまする。どうか、寛大な処置をお願いいたしまする」

「それでよいのか」
それでよいのです
「本庄は、庄内で恨みを買いすぎじゃ。このまま、本庄が統治すれば、一波乱あるのは
必定じゃ。直江が直接治めたほうが良いのではないか、恨みを流し長久の治政を確立せ
ねばならぬのではないか」
なんと、千里眼じゃ。関白殿下は恐ろしいほどの切れ者じゃ
「喧嘩両成敗という名目で、本庄親子は流罪にする。しかし、時期を見て許すつもりじゃ
それで、どうか」
ホッとする兼続、上杉の鼎の軽重が問われる事態をうまく切り抜けることができたあ、
しかし、関白殿下は、なんでもごぞんじじゃな。おそらく、諜報機関が全国で活動して
おるのじゃろう。その指揮官は誰なのじゃ。
0257日曜8時の名無しさん
垢版 |
2016/12/28(水) 22:34:17.84ID:o1o4LF6/
第四十五話「利休」(4)

「石田は陸奥の一揆鎮圧作戦の検分役として派遣されておるようでございまするな」
上杉屋敷に戻ってきた景勝と兼続、早速お船も交えて情勢分析をしている。
「石田が居てくれたら、なにかと好都合なのじゃが」
兼続が、ため息をつく
「そういえば、石田治部殿は、佐和山十九万六千石の領主に抜擢されたという
話を聞きこんでまいりました」
諜報活動というと、天井裏に潜んで、聞き耳をたてる情景を思い浮かべるが
噂話を聞きこんだりしてくることも、立派な活動である
「秀次公が、改易された織田信雄様の領地に移り、空いた近江の北半分の領主に
抜擢されたのでござるか。大出世じゃな。佐和山は、交通の要衝。信長公も腹心の
丹羽長秀殿を置いておった。石田も、これで名実ともに、関白殿下の側近中の側近に
なたっというわけでござりまするか」
0258日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/01/01(日) 23:11:05.81ID:GV1PDGYv
第四十五話「利休」(5)

「伊達はどうなるのでしょうや」
「関白殿下の仰せでは、自筆の文書を押さえておるとのことで、下手すると
改易されるのではありますまいか」
「伊達自体、どうなってもかまわんが。このような形で東国の大大名が改易
される前例となることは、東国の領主は、みな内心嫌がっておるのではござ
いませぬか。徳川殿も前田殿も、嫌がっておられるのでは」
メダカが流れに逆らうように、本能的に嫌がっておるのじゃな、
「ところで、秀長公の具合はどうなのじゃろう」
融和派の後ろ盾である秀長公は、病に伏してもう半歳になる。
0259日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/01/03(火) 19:38:37.94ID:UWWCv5aw
第四十五話「利休」(6)

「秀長公が重篤のようじゃ。京・奈良のすべての神社仏閣に、平癒のための祈祷
を行うようご命令があったそうじゃ」
朝食をたべながら、直江夫妻は情勢分析をしている。
「秀長公は、豊臣の柱石、余人を以て代えることのできないお方ですのに。
これで、石田たち側近の権勢が、よりますということですな」
「そなたは、石田と入魂ではないか。石田の出世は、われらにとって、悪い
ことではないと思うが」
「個人的には、石田の出世はよろこばしいことでございまする。
しかし、われらは所詮外様の大名にすぎませぬ。
十二分に気をつけねばなりますまい」

「伊達も都に召喚されるようじゃが」
「天正十九年も年初より、波乱含みでございまするな」
伊達を潰したい石田など側近と潰されるのを見たくない外様の大名。
徳川様や前田様。われらも、こちらに入る。
しかし、目立つ動きをして石田の機嫌を損ねることも得策ではないのう
まったく、謙信公のように独立独歩の戦国大名で居たかったぞ。
0260日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/01/09(月) 23:30:21.25ID:eCFzIQI/
第四十五話「利休」(7)

 本庄親子は、奈良・西ノ京に配流と決定した。
坊主にでもなれということかあ。緩い処分に驚く、兼続である。
0261日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/01/15(日) 23:04:11.28ID:Px+j6/2O
第四十五話「利休」(8)

「大仏様を野ざらしにしてよいのじゃろうか」
「鎌倉の大仏も、野ざらしのままになったようじゃが。そうなるのかな」
本庄親子を奈良に送ってきた兼続、松永久秀が大仏殿を焼いた跡をみて感慨にふける
「ご家老、わしはここでご赦免の日をまてばよいのじゃな、
仏門にでも入って修行いたそうかな」
本庄、殊勝じゃ。
「本庄、そなたに頼みがある。そなたは百戦錬磨の名将じゃ。
信長公と組んで謙信公を討たんとしたほどの外交手腕もある」
「ご家老、この期に及んで、わしの旧悪を暴露することもあるまい」
兼続、取り合わず話を進める
「そなたは一時、上杉を離れることになった。いずれ戻ってもらうがな
それで頼みたいのは、この世の動きと上杉の将来をそなたに考えてもらいたいのじゃ
岡目八目とも申す。すこし、離れたところから、見たり考えたりする者は
貴重じゃ、その役を頼みたいのじゃ」
「ご家老、重ね重ねのご厚情、痛み入り申す」
本庄頼むぞ
0262日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/02/05(日) 22:25:25.47ID:DBJZ+99m
第四十五話「利休」(9)

「当家の家臣が、ご領内の奈良に配流となったので、ご挨拶に参上しただけで
ございまする。そうですか、そこまでお悪いとは存じ上げませんでした」
大和郡山城に豊臣秀長を表敬した兼続、
しかし応対に出た重臣藤堂高虎の顔は暗い。
「折角、お出でいただいたのに、主君も大変残念がっておられまする」
「以前にお目にかかったときは、有馬温泉に養生に行かれて、おかえりになった
ときでございましたが」
小田原攻めに参陣できないくらい、悪いのは知っておったが、
もしや命が尽きるほど悪いのやもしれぬな、命旦夕ということかな
慎重に探りを入れる兼続。しかし、病状を教えてくれるはずもない

「ところで、にぎやかな城下でございまするな。
これほど、栄えておるとは存じ上げませなんだ」
そうなのだ。物資が、続々と運び込まれ、業種ごとに区切られた町々で
商人によって、売りさばかれている。
0263日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/02/12(日) 23:21:05.13ID:2pk5xz+w
第四十五話「利休」(10)

「そうじゃ。直江殿、よいものをお見せしましょう」
藤堂高虎、兼続を案内する。
「ここじゃ」
カラリと襖を開ける
「なんじゃ。こりゃ」
思わず口から嘆声がでる兼続

部屋の中には、天井までうずたかく積まれた金銀財宝があった
「数万両はあるじゃろうな。わしは数えたことないが」
「秀長公は理財の道に長けたお方なのじゃなあ」
「全くそうじゃ。兵糧から材木まで、なんでも商売されたのじゃ」
ふうむ。武士らしくはないが
「島津征伐の際に、友軍に兵糧を売って、軍監にわしは旅籠銭を持ち合わせぬ
と皮肉を言われたり、材木の商売をして、関白殿下に叱責されたこともあった」
藤堂高虎、主君の死にかけの主君の悪口を言うつもりなのか
「秀長公は、それほど商売に熱心じゃったのじゃが、なぜか分かるか」
0264日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/02/26(日) 23:07:03.13ID:yDJkbyQF
第四十五話「利休」(11)

「それは秀長公が、関白殿下の補佐役として、長年資金繰りを担当されてきたから
ではござらんか。関白殿下が、お歳暮を山のように贈って信長公を感心させたお話
がございましたが、それも秀長公が但馬の生野銀山を接収したから可能になったの
ではございませぬか」
流石、佐渡銀山の代官をしているだけあって兼続、穿った見方をする。
「よくご存じじゃな。関白殿下は、大気者じゃから、後先考えずに、全財産を蕩尽して
後悔せぬようなところがある。鳥取城渇泣かしも、高松城水攻めも、大土木工事じゃった
から大変な物入りじゃった。秀長公は、いつも、胃が痛いとこぼされておったわ」
0265日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/03/03(金) 23:26:02.59ID:EIn5BoDb
第四十五話「利休」(12)

「秀長公の領国である、紀伊も大和も難治の国なのじゃ。
紀伊は、雑賀や根来の鉄砲隊の故郷で、関白殿下が十万の大軍で攻め滅ぼされた
ところじゃし、大和は、興福寺やほかの寺社の勢力が強いところじゃ。京の公家との
つながりもある。
秀長公は、商業を振興することで、国を富ませ、民草の気風を変えることを
お考えになられたのじゃ」
なるほど。これは名案じゃな
0266日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/03/21(火) 23:15:52.29ID:xfPQ6A7v
直江兼続.........内野聖陽 主演
お船................観月ありさ
上杉景勝.........渡辺謙
樋口惣右衛門..長塚京三
お藤.................紺野美沙子
直江景綱.........上條恒彦
仙桃院.............若村麻由美
泉沢久秀..........田辺誠一
甘糠景継..........近藤芳正
初音.................川栄李奈
上杉景虎..........高岡蒼甫
上杉謙信..........舘ひろし
豊臣秀吉..........近藤正臣
高台院..............松原智恵子
淀殿.................仲間由紀恵
豊臣秀頼..........松坂桃李
千姫.................広瀬すず
福島正則..........高杉亘
加藤清正..........宇梶剛士
小早川秀秋......佐藤健
石田三成..........香川照之
井伊直政..........村上新悟
毛利輝元..........小日向文世
前田利家..........竜雷太
徳川家康..........千葉真一
0268日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/04/09(日) 22:39:10.41ID:uqbAZIUb
第四十五話「利休」(13)

「大和大納言様、ご逝去された由、二十二日のことでございまする」
上杉の諜報機関を握るお船が、景勝と兼続が話し込んでいる部屋に入ってきて
報告する。
やはり
「よいお人は長生きしませぬな」
「本当に、寛容なお方じゃった。助けられた諸侯も多かったじゃろうに」
「われらも、いろいろお世話になった」

「葬儀は、大和郡山城で、数日後に行われる由」
「われらも、惨烈せねばなるまいて」

「伊達殿が、そろそろ都に到着するようでございまするな」
「さて、秀長公が亡くなった直後に、伊達が来るのか。
一揆を使嗾した罪で、改易されるかもしれぬ」
「大きな政治的な変動が起きるかもしれぬなあ」
0269日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/04/17(月) 23:10:43.47ID:iDSey+BD
第四十五話「利休」(14)

「今日の伊達は、流石でしたな」
聚楽第で、伊達政宗の査問があった夜、上杉屋敷で兼続が、お船に報告している
「ふうむ、伊達殿はうまく切り抜けられたのか」
考え込むお船。細い指で顎を支える。
「伊達殿の家臣が蒲生殿のところに逐電し、伊達殿が一揆の首謀者に出した書
簡も蒲生殿の手に落ちたと聞いたが、いかに申し開きしたのじゃ」
「伊達殿は、偽物である、真筆であれば鶺鴒の花押の眼に針で穴を通しておる
はずなのに、この書簡には、穴がないと申し開きしたのでございまする」
「みな、驚いたじゃろう」
「はっ。関白殿下をはじめ居並ぶ諸侯が、どよめきました」
「おそらく、伊達殿が一揆を使嗾したのは事実じゃ、葛西や大崎で大きな一揆を
起こして、混乱のなか木村殿を討ち果たして、自分の領地にしようとしたのじゃ」
「それがしも、そうじゃと思いまする」

「関白殿下もだまされたということか」
「いや、関白殿下も伊達の仕業であることは百も承知じゃと思いまする、
関白殿下は、伊達殿の器量に感心して、お許しになられたのじゃと思いまする」
0270日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/04/28(金) 23:22:48.72ID:5oyRuqKg
第四十五話「利休」(15)

「まだ、葛西・大崎の一揆も鎮圧しているわけではない。
そのうえ、伊達を改易したら、奥羽は収拾のつかないことになる。
関白殿下の征明の戦がさらに遅れることになる。
関白殿下は、先まで深くお考えなのじゃろう」
流石、お船、大局のわかったことを言う。

「そういえば、利休様が、関白殿下の御不興を蒙って、都を追放されたとか」
「利休様は、長く枢機に参画されてこられたお方、われらごときでは、うかがい
しれない事情があるのだと思われまする。下手に、関係して、大やけどするやも
しれませぬな。見て見ぬふりをするのが、一番かと」
上杉家の家老として保身の術に、さらに磨きをかける直江兼続である
0271日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/04/30(日) 23:01:45.15ID:KRe4E7X0
第四十五話「利休」(16)

「ご家老様、石田治部殿がお見えでございまする」
「お通しせよ」
何の用じゃろ。奥羽から帰ってきても忙しそうじゃが。悪い予感しかせぬが

「やあ、やあ。奥方、相変わらず、お美しいのう」
勝手知ったる他人の家、我が物顔にふるまう石田治部、自然に上座に座り
「手土産を持ってきた。これで一杯やらんか」
なんじゃ
「近江の鮒ずしじゃ。領民の献上品じゃ」
「そういえば、こたび近江十九万四千石の大名になられたそうで、お慶び申す」
「いやいや。関白殿下の御厚情にお応えするため、粉骨砕身するのみじゃ」
まんざらでもない様子の石田。
「まあ。一献。ところで、奥羽の情勢は、どうなっておるのじゃ」
「それより、そなた伊達をどう思う」
石田、あいかわらず、自分勝手だ
「伊達殿は、流石じゃな。花押の鶺鴒の眼に針で穴を通しておくなど、余人には
考えもつかぬからくりじゃ」
「奥羽の田舎者の考えそうな小細工じゃ」
憎々しげに石田が吐き捨てる

「ご用意ができました、さあ、こちらへ」
酒の肴を用意していたお船も話に加わる
「石田様は、伊達様をどうしたいのでしょうや」
お船が、やんわりと聞く
0273日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/05/03(水) 23:00:32.37ID:23mspzsf
第四十五話「利休」(17)

「伊達殿は、なかなか風流なおひとでござるな。
詩歌に優れ、芝居気もある。関白殿下は、面白がっており、お気に入りじゃ、
しかし、野性が抜けておらぬ。機会があれば、四方を併呑しようと、虎視眈々じゃ
檻の中にいれて、矯正せねばなるまいな」
どういう意味じゃろう。
「四国に国替えという噂もあるようじゃが」
「大事の前の小事じゃ。われらは、征明の戦を控えておる。
いたずらに混乱を起こすような種をまくことはあるまい。
しかし、これはあくまで私見じゃ。関白殿下のお考えは、伺いしれぬものがあるのでな」
0274日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/06/04(日) 22:22:22.24ID:a6fy2kv9
第四十五話「利休」(18)

「これは、珍味でござるな。魚というより牛の乳に近い味がいたしまするな」
「一年以上漬け込んでおった逸品じゃということじゃ。うまいじゃろう」
石田、何かを思い出したらしく、風呂敷包みを開ける
「直江、よいものをみせてやろう」
おおきな日本地図じゃな、

畿内 百四十万石
東海 四百九十五万石
東山 五百五万石
北陸 二百四十二万石
山陰 百十八万石
山陽 百六万石
南海 百四十万石
西海 三百六十二万石
合計 二千百八万石

「日本国の石高じゃ。陸奥と出羽の検地が済めば、完成する。
一万石あたりの動員兵力を、二百五十人とすると、五十万動員できることになる」
「軍役の基準というわけじゃな」
0275日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/06/18(日) 22:01:35.22ID:juCYuO2o
第四十五話「利休」(19)

「ところで、直江。上杉に、奥羽への出兵を頼みたいのじゃ」
やはり、悪い予感が的中した兼続である
「伊達が上洛して、大崎・葛西の一揆が再燃したのじゃ
九戸の謀反も本格化しておる。
秀次公を総大将に、徳川殿など東国の武将を挙った圧倒的な大軍で鎮圧するつもりじゃ
それで、助勢をたのみたい」
頼んでいるようには、見えない石田である
「関白殿下より、正式なご命令がでるじゃろうが、心づもりをしておいてもらいたい」
用が済んだ石田、立ち上がり、
「わしは、これから九州に行かねばならぬ。ああ、忙しい、忙しい」
確かに、奥羽に派遣されたと思たら、次は九州、余人を以て代えがたい能力の持ち主だから
使いまわされておるのじゃな
0276日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/06/18(日) 22:17:27.27ID:juCYuO2o
第四十五話「利休」(20)

「出兵は、春先になるじゃろうが、さきにわしが国元に帰り、準備をしよう」
景勝に報告すると、景勝は、先に帰国するという、戦に目がないのは、先代譲りじゃな
「与六、そなたは残余の兵を率いて、ゆるゆる帰国せよ」
早速次の日に、わずかな旗本を率いて帰国する景勝である

「御館様は、武人じゃから、血が騒ぐのでしょうか」
「御館様は、宮廷政治が苦手なのじゃ。まあ、好きなものもおらぬじゃろうが。
これ幸いと、増援要請を口実に帰国されたのじゃ。そして、この選択は正しい。
秀長公が亡くなってより、権力構造が変化しておる。
利休殿の、京都追放も変化の現れじゃ、
触らぬ神に祟りなしじゃ」
流石、お船、相変わらず、鋭いことを言う
勉強になるわー
0277日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/06/25(日) 23:10:46.02ID:DkWbZOOt
第四十五話「利休」(21)

「直江、そなた上杉の軍勢を率いて、利休の屋敷を警護せよ」
警護!何のために。聚楽第内の利休屋敷をけいごするのじゃ
「細川忠興や古田織部が奪還のため兵を動かすやもしれぬ、充分注意すべきじゃな」
「承りました。増田様」
使者として、関白殿下の命令を伝える増田長盛に応答する兼続である
しかし、大変なことになったな
お船殿に相談しなければなるまい
0278日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/02(日) 19:39:28.10ID:QNz6Lm1z
第四十五話「利休」(22)

「増田様がお見えになったとか、どういうことじゃろう」
「石田が不在でございまする。利休殿と、さほど親しくなく、軍勢が揃っておるから、お鉢が
回ってきたのでしょうや」
「それに、上杉というかそなた自身が信頼されておるということじゃな」
「困りまする。事情も分からぬのに、難しいお役目をおしつけられて」
直江夫婦、いつものように激論中。お家の浮沈がかかっておるから当然である

「誰か、事情通のお方にお伺いする必要がありまするな」
「古田織部殿や細川忠興殿に聞いてみるか」
「かえって拗れるのでは。それに関白殿下に痛くもない腹を探られるやもしれませぬ」
「そうじゃなあ。誰かおらぬか」
「細川幽斎殿は、どうじゃろう」
「忠興殿の御父上じゃし、われら上杉とも、謙信公以来の友誼がある名案かもしれませぬな」
0279日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/09(日) 00:02:11.02ID:MAygSUKx
第四十五話「利休」(23)

「夜分、すまぬのう」
細川幽斎、兼続の出した使者と一緒に、上杉屋敷にやってくる
「聞いたぞ。直江が利休屋敷を警護することになったそうじゃな」
話が早い、幽斎殿も、苦慮されておるようじゃな
「それがしの妻でございまする、こちらへ」
「おお、上杉の諜報を取り仕切る才女じゃと聞いておるぞ」

「幽斎様、いろいろ教えていただきたいのでございまする」
0280日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/09(日) 22:45:07.04ID:MAygSUKx
第四十五話「利休」(24)

「細川様、利休様の屋敷の警護を命ぜられておりまする。
増田殿のお話では、古田織部殿やご子息の忠興殿が、利休様の身柄を奪還せんと
するやもしれぬので、警戒せよとのことでありました、
一体何が起きておるのでござりまするか」

「世情言われておるのは、大徳寺山門の利休像が不敬にあたるとか。
何のこじつけでござりまするか」

直江夫婦、かわるがわる細川幽斎に質問する
細川幽斎、本能寺の後、家督を息子・忠興に譲るも、秀吉の御伽衆の一人として重用されている
お気に入りの一人である、また、利休とも親しく、利休が京より追放されたとき、見送っている。
0281日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/18(火) 22:30:41.43ID:lP50FZvs
第四十五話「利休」(26)

「大徳寺山門の二階に雪駄履きの利休像を設置し、その下を関白殿下に通らせようと
したことが増上慢であると批判されたこと。また、大徳寺山門改修の費用を捻出する
ため、安物の茶器を高値で売却したことが売僧の所業と批判されたと聞いておりまするが」
お船が、細川幽斎に尋ねる
0282日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/21(金) 23:27:05.93ID:EMR+PVBe
第四十五話「利休」(27)

「口実じゃ。後付けの口実にすぎぬ。山門など二年も前の話じゃ。
利休殿は、天下一の茶人じゃ。天下一の利休殿が、よいと決めれば高くなるのは
当然のことじゃ。何の不思議もない。そんなことは、わしが初めて会った時から
やっていたことじゃ。昨日今日始めたことではない」
細川幽斎、熱弁を振るう
0283日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/22(土) 23:24:54.98ID:KbkitLkO
第四十五話「利休」(28)

「大徳寺の古溪上人をご存知か。先だって亡くなった秀長公の導師を務められたお人じゃ」
細川幽斎、長身雄大な身体をかがめ、声を細める
「古溪和尚は、大徳寺に総見院を創建し、信長公の菩提寺・天正寺の創建を関白殿下に任された
お方じゃ。しかし、小牧の陣で信雄様との講和が成立したので、天正寺の建設は中止となったのじゃ。
もともと、天正寺の建設は、信雄公と戦うための大義名分にすぎなかったのじゃからな。
ところが、古溪和尚は、納得せず、関白殿下に、再三反対の意見具申をしたので、関白殿下
の怒りをかい、九州に配流となった。大徳寺の山門は、古溪和尚が留守の間に、利休殿が
造られたものなのじゃ」
0284日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/24(月) 23:08:46.88ID:0ZfZ5N3B
第四十五話「利休」(29)

「大徳寺の山門・金毛閣というのじゃが、一休禅師を偲んで、連歌師の宗長というものが
造り始めたのじゃが、資金が尽きたのか、数十年放置されて負ったのじゃ。それを利休殿
が資金を出して、二階建てを完成させたので、大徳寺・古溪様は、利休殿の働きを多とされ
顕彰する目的にで利休殿の木像を造って、二階に安置したのじゃ。利休殿が、自ら進んで
造ったものではないのじゃ」
「では、そのことを申し開きして、お詫びすれば、関白殿下の御勘気も解けるのでは
ありませぬか」
0285日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/24(月) 23:17:47.96ID:0ZfZ5N3B
第四十五話「利休」(30)

「いや、利休殿が関白殿下にお詫びすれば、申し開きなどせずとも済む話なのじゃ、
前田利家様も何度も、お詫びするように説得を続けておる。北政所様などにお願いする
ようにも、説得しておるのじゃが、利休が強情なのじゃ」
「関白殿下は、利休殿がお詫びするのを待っておられるということでありまするか」
「そうじゃ。なんといっても、利休は関白殿下が天下一の茶人に仕立て上げた関白殿下
の駒、大事な駒じゃからな」
透徹した人間関係理解を披歴する細川幽斎、醒めたところが足利義昭・信長・秀吉と
主君を変えても、誰からも後ろ指さされない遊泳術なのじゃろうか
0286日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/29(土) 23:30:34.82ID:vX5kK0bV
第四十五話「利休」(31)

「利休殿には、お詫びしたくない心情のようなものがあるのでしょうか」
絶体絶命なのに、死ぬことも恐れてはいないのじゃろうか

そういえば、関白殿下が利休殿の庭の朝顔が満開なことを聞きつけ、見に行ったら
すべてむしり取られており、床の間に一輪だけ飾っておったと聞くが、一歩間違えば
御不興を蒙ったやも知れぬ。一輪しかない朝顔が萎れたら、どうするつもりだったのじゃろうか
利休殿は関白殿下と命懸けで戦っていたということなのじゃろうか

「それがあるのじゃ。関白殿下は御かわりになられた。側近として関白殿下の覇業に
協力してきた利休殿には、失望があるのじゃ」
0287日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/07/30(日) 23:11:05.12ID:Akwahaua
第四十五話「利休」(32)

「利休殿は信長公の茶頭じゃったお方じゃ。
信長公は、茶の湯御政道と称されて、茶の湯に特別な意義を付与された
茶の湯は、恩賞として許可されるものじゃった
関白殿下も中国戦線での功績により、はじめて茶の湯を嗜むことを許可された
いわば、関白殿下にとって、利休殿は、信長公と関連付けて記憶される仰ぎ見る存在
なのじゃ」
ふうむ
「関白殿下は、織田家内の政治工作の際、利休殿の人脈を利用した。
そして、利休殿も、関白殿下を信長公を超えていかれるお方ということで、喜んで
尽くしてこられたのじゃ。正親町天皇への献茶、北野大茶湯、どちらも関白殿下の
政治力の伸長のための大きな出来事じゃった」
0288日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/08/01(火) 22:59:33.38ID:NE3VQX22
第四十五話「利休」(33)

「若い頃の、というか本能寺以前の関白殿下は、朗らかで前向きな働き者じゃった
それに、よく気が付く、誰にも優しいお人じゃったな。
関白殿下に一度でも会えば、誰でも好きになる。このお方のために、働きたいと思う
人気のあるお方じゃた。それゆえ、関白殿下が織田の政権を簒奪しても、織田家中は
従ったのじゃ。誰しも、若い頃の関白殿下を知っておったからのう。
ところがじゃ、関白殿下は、変わられた。
そなた、昨年冬の落書の事案を知っておるか?¥」
0289日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/08/13(日) 23:14:17.78ID:RTx0XnlP
第四十五話「利休」(34)

「聚楽第の落首のことでござりまするか」
「そうじゃ、聚楽第の南鉄門に夜陰に落首したものがあったのじゃが、
激怒された関白殿下は、番人七名を残酷に処分した。一日目に鼻を削ぎ、二日目に
耳を削ぎ、三日目には、逆さ磔にしたのじゃ。それだけではない、関与を疑われた
者の親族まで、七歳から八十歳までの者共が百余名、六条河原で処刑されたのじゃ」
なんと、残酷な話じゃ
0290日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/10/03(火) 23:24:17.70ID:keaj9OqG
第四十五話「利休」(35)

「われらも戦国を生きる武士じゃから、極悪非道な所業を積み重ねてきておる。
だまし討ちも数知れず、無辜を殺傷したこともある。しかし、すべて、理由が
あることじゃ。関白殿下も、播磨平定の際には、一城皆殺しにされたこともあったが
理由があったことじゃ。しかし、今回の刑罰はなんじゃ。理がないのではないか」
0291日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/11/03(金) 23:10:42.73ID:A4UP8pFn
第四十五話「利休」(36)

確かに、冷静な関白殿下にしては、不可思議なふるまいじゃな
「よほど、逆鱗に触れるような内容の落書だったのでございましょうな」
それとも、何かほかの魂胆があっての振舞なのじゃろうか
「土民どものやることなど、目くじら立てずに、笑っておればよいものを。
今回の一件で関白殿下は、京の輿望を失ったこととあいなった
武士を船に例えれば、民草を船を浮かべる水のようなものじゃ
なんでもやってよいというわけではない」
細川幽斎、かなりはっきりものを言う
0292日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/11/12(日) 22:09:48.06ID:OS/Gue9+
第四十五話「利休」(37)

「お館様より、お手紙が届いておる」
先日、帰国した景勝さまは、部府帰国されたようじゃな。
「春になれば、娘のお松を京に上らせるというて下されておられる」
なんと
「なんでも、お転婆が過ぎて、乳母の手には負えないそうじゃ。
母親の手元で育てるのが一番じゃということじゃ」
「有難いお話でございまする」

「関白殿下も、鶴松君の行く末を心配されて心を乱されておるやもしれぬな」
突然、するどいことを言うお船。
0293日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/11/12(日) 22:54:58.44ID:OS/Gue9+
第四十五話「利休」(38)

「動員兵力は千三百余、完全武装で蟻のはい出る隙間もない警備をするのじゃ。
妙な気を起こすお人が出てこぬようにな」
翌朝、部署を定める兼続
「古田織部殿や細川忠興殿に使いを出して、ご挨拶しておいたほうがいいのではないか」
お船が念入りな作戦を思いつく
「そうですな。丁寧な口上をいわせましょう」
まさかとは思うが、京の都で市街戦をするわけにはいかぬからな。
それこそ、鼎の軽重を問われる事態になりかねぬ
0294日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/11/27(月) 23:04:58.77ID:RhLvqnbg
第四十五話「利休」(39)

「直江山城様、主人がおもてなしをしたいと申しておりまする」
利休の下人が、兼続を呼びに来た。
なんという胆力、いつ殺されるかもしれないのに。
茶の湯の大成者ともなると、そこらの武将より肝が据わっておるようじゃ
「有難い。それがしも利休様にお目にかかりたいと思っておりました」
0295日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/12/27(水) 23:06:43.51ID:ASxws8ur
第四十五話「利休」(40)

招じられた茶室は、二畳の閉ざされた空間である
にこにこ笑みをたたえながら、流れるような所作でお茶を点てる利休
昨日より大徳寺山門の利休像が、さらされておる。
謝らない限り許さないという関白殿下の意志の現れじゃ
利休殿も百も承知じゃと思うが、一言詫びを入れればすむものを。
「結構なお手前で」
一期一会というが、本当に一期一会になってしまう。
「関白殿下は、利休殿がお詫びするのを十日ばかりお待ちになり、
とうとうしびれを切らして、利休殿の木像をさらされました。
関白殿下は、天下人。どんなに後悔していても、ご自分の出された指示を撤回することは
できませぬ」
「綸言汗の如しということですかな」
なんだ、利休殿もわかっておられるのか。

「関白殿下には天下を統べる力量と意志がございましたな」
悠然と昔話を始める千利休
「そこが柴田殿と違うところじゃったな」
0296日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/12/29(金) 22:54:54.82ID:dbbTzn5R
第四十五話「利休」(41)

「中川瀬兵衛殿殿をご存知か」
「山崎合戦で先鋒として奮戦し、賤ケ岳の戦いでは、佐久間盛政の猛攻にあい。勇戦
むなしく討ち死にされた勇将でございまするね」
「古田織部殿の義兄にあたるお人で、これは織部に聞いた話なのじゃが、山崎合戦の
あと、各陣を巡察した秀吉公は、瀬兵衛大儀と言い捨てて駕籠から下りもせず行ってし
まわれたそうじゃ。瀬兵衛殿は、もう天下人気取りかと言い返したそうじゃ。お二人は
仲良しじゃったからのう」
利休様、何のお話ですかな。
「関白殿下は、本能寺で信長公が亡くなったことを知った瞬間から、天下を意識されておったのじゃ。
信長公が亡くなって何をしてよいか、わからなくなった柴田殿や滝川殿とは、そこが違う」
お話の意図が読めませぬ
0297日曜8時の名無しさん
垢版 |
2017/12/29(金) 23:17:49.81ID:dbbTzn5R
第四十五話「利休」(41)

「それがしは、関白殿下がおつくりになられたものでございまする。
禁中献茶奉仕をさせていただき、利休の居士号も朝廷より賜った。
堺の一商人にすぎないのに、天下一の茶人といわれるようになった。
すべて、関白殿下のお引き立てによるものでございまする」
そこまで、わかっているのなら、一言お詫びしていただきたいのですが
しかし、重ねて説得の言葉をいえない兼続である
0298日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/01/07(日) 22:53:25.55ID:BkqWqrJz
第四十五話「利休」(42)

「関白殿下は、何事も一生懸命のお方でござりまするな。
信長公は、没頭しているようで、どこか醒めたところがあられた。
茶道の名物も収集して自慢されておったが、本当に心から、茶の湯がお好きだったのか
利休には、わかりませんでしたな。
関白殿下は、違う。
心から、全身全霊で、楽しんでおられる」
確かに、関白殿下は、冷静で考えの深いお方じゃが、なんというか、白けたところが
ないお人じゃな。諦めとか、限界とか、あまりお考えにならないのかも知れぬな。
遊ぶことも一生懸命、遊んでるんだけど、遊びがないのじゃ、打てば響くお方なのじゃ。
それゆえ、些細なことでも、立腹されるのじゃろうか。
とことん真面目なお方なんじゃろうな。
「関白殿下は、信長公を超えようとされ、超えたと思われておられる。
しかし、それは違う」
0299日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/01/08(月) 03:39:57.12ID:ZCfTy3RT
タイガドラマモオモシロイケドオススメノジョウホウ
グーグル検索⇒『立木のボボトイテテレ』

4AHV7
0300日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/01/16(火) 22:25:46.25ID:h6lUReNS
第四十五話「利休」(43)

「関白殿下は、信長公の構想をなぞっておるに過ぎませぬ」
「徳川様が最後の客人かと思うておりましたが、最後に直江殿にお目にかかれて幸せで
ございました」
0301日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/01/25(木) 22:30:47.13ID:9MgEjprL
<反省会>

「利休様って、理解するのが難しいお方じゃのう」
「御意。考えなおさねばなりますまい。時間を空けて、考えましょう」

「ところで新しい大河、いかがなものでしょうか」
「筆者は、司馬遼太郎大好き人間で、特に「翔ぶが如く」は朝日新聞に連載されていた
頃から愛読しており、どうしても比較してしまうのじゃ。
「翔ぶが如く」の原作は、明治以降の西郷の話だけど、大河は、脚本家の先生が
司馬先生の作品を上手く整理して、幕末編を付け足したのじゃ。特に、参勤交代というか、
斉彬の兵を率いて江戸に赴き、武力を背景に幕政の変革を迫る計画に焦点を当てたところが
秀逸じゃったな。結局、西郷の西南戦争は、斉彬の計画をなぞったものじゃ」
「斉彬公が生きておれば、幕末も相当変わったものになったでありましょうな」
「この時代の大名家では、毒殺が多かったようじゃな」
「堀秀政殿と同じように、水にあったったのではありませぬか」

「解説本を見てないから、原作も読んでないから、何とも言えぬが、面白ければいいな、
今までのところ、可もなく不可もないという感じじゃな。すこし、軽躁なところが鼻に
つくことが心配じゃな」
0302日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/01/30(火) 22:25:53.13ID:4tYaO/MZ
第四十六話「文禄」(1)

 天正十九年三月、南部家の家臣である九戸政実が挙兵、鎮圧に手間取る南部家当主・
南部信直は豊臣秀吉に、援軍の派遣を要請した。
同年六月、豊臣秀吉は、東国の諸将に援軍の編成を下令、総大将豊臣秀次以下、数万の
大軍の大軍が、九戸討伐に出陣することになった。

「われらは、最上領を通行することとあいなりました。毒殺には留意せねばなりますまい」
旗下の精鋭を本庄に殲滅され、庄内を奪回された最上義光は恨み骨髄のはずじゃ。
千載一遇の好機じゃと、お館様の毒殺を企図するやもしれぬ。
「くれぐれもご注意あそばすように、お願いいたしまする。
みなも、ここは戦場じゃと思え」

上杉軍が最上領に進入する
0303日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/02/10(土) 22:30:20.46ID:RRlip7hV
第四十五話「文禄」(2)

「しかし九戸政実は、何を考えておるんじゃろ」
景勝が、もっともな疑問を口にする。
天下の大軍を相手に勝ち目などないことも分からないのじゃろうか。

「家督争いが拗れておるようでございますな。九戸政実の弟も有力な後継候補じゃった
ようで、武勇に優れる九戸政実は、速戦して南部の当主を討ち取り、自分の弟を当主に
押し込んで既成事実化して、改めて関白殿下に承認してもらう心づもりだったのではあり
ますまいか」
軍監として同行する大谷刑部が懇切丁寧に教えてくれる。
「ところが、南部の当主殿は、徹底して決戦を回避して、関白殿下に救援を求めてきたので
ございまする、当主殿の作戦勝ちといったところでございまするな」
ほお。惣無事令の精神からいっても正しい進退なんじゃろうが、
しかし武士といえるんじゃろうか。

「各軍勢の部署は以下の通りでございまする。
白河口は総大将秀次公に徳川殿
津軽口は前田利家殿・利長殿
仙北口は上杉景勝殿
相馬口は石田治部、佐竹義重殿
これに地元の大名が参加することとなっておりまする。
予定される総兵力は六万余。この大軍で、奥羽の一揆を徹底的に鎮圧いたしまする」
0304日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/02/11(日) 21:41:09.70ID:iSIo3EUr
第四十六話「文禄」(3)

「最上義光も案外じゃったな」
行軍中の景勝がつぶやく。
そうなのだ。
精鋭を本庄に殲滅され、庄内を奪回されて恨み骨髄のはずなのに、そんなことはおくび
にも出さず、上杉勢の行軍に、いたれりつくせりのもてなしをする最上義光なのである。

「われらは、足利一門・斯波の嫡流でございまする。足利と上杉は、夫婦のような関係
を何百年も続けてまいりました。先祖同様こんごとも、よしなにお願いいたしまする」
おべんちゃらも言う最上義光。
流石に、調略のみで出羽に一大勢力圏を築き上げただけのことはある。
誠心誠意嘘がつける男じゃ。

「最上は、秀次公に取り入っておるようでございまするな」
ぬかりなく最上義光の周辺に細作を配置している兼続である。
「どうも、庄内の裁定で、われらに負けたため、関白殿下に取り入るのは諦めて、
秀次公を先物買いする気のようでございまするな」
「留意せねばならぬな」
われらは、関白殿下の側近、石田と親しい。親しすぎるほどじゃ。
しかしそれゆえ、秀次公に取り入るのは、危険なことなのじゃ。
石田に臍を曲げられて、関白殿下に讒言でもされたら、あっという間にお家滅亡じゃ。

「九戸攻撃を急がねばならぬのう」
今後のことを考えて功名をたてようとする景勝。
いや、これだけ道が悪いと、六万の大軍が集結すると、補給に詰まることになるじゃろ。
むしろ、出羽の一揆をひとつずつ、着実につぶすことのほうが肝要じゃ。
0305日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/03/21(水) 23:05:50.75ID:nnmqA6pK
第四十六話「文禄」(4)

天正十九年七月中旬、春日山城を進発した上杉勢は、八月下旬には旧葛西領内に到着した。
「このままでは九戸討伐に参陣できぬかもしれぬのう」
景勝は焦りを隠せない様子だ。
「此度の主役は伊達と蒲生殿でございまする。大崎・葛西の一揆を使嗾した疑い、まあ
本当は事実ですが、を挽回するために伊達は功名をたてようと必死でございまする。
蒲生殿も、競争相手の伊達に後れを取るわけにはまいりますまい」
兼続は、いつにもまして冷静に見ている。
「われらは、お指図に従っておればよいのでは。どうせ、恩賞も望めない戦でございまする」
0306日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/03/28(水) 22:03:55.73ID:H6dqZUpr
第四十六話「文禄」(5)

「伊達勢が葛西大崎の一揆を制圧したようじゃ。
降伏した一揆の首謀者を須江山というところに呼び寄せて、皆殺しにしたそうじゃ。
わしらは、土方のようなことをしておるのに」
景勝、普請ばかりさせられている現状への不満を滲ませながら、愚痴る。
「案外、一揆を使嗾した証拠を隠滅するためではありませぬかな」
冷静沈着な兼続である。
「死人に口なしでございまするよ」
腹黒さも増しているようである。

「都より急使でございまする」
「通せ」
「奥方様より書状でございまする」
お船殿がわざわざ送ってくるとは余程のことじゃな。
もどかしそうに、封を切った兼続、景勝に一礼して先に見る。
「ううむ」
「どうかしたのか」
「鶴松君逝去されたようでございまする」
「なんと。おいたわしい」
「正月頃お風邪を召されましたが、ご快癒されたと聞いておりましたが」
関白殿下も、落胆されておるじゃろうな。
後継者を失ったわけじゃ
0307日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/03/29(木) 23:11:34.87ID:p3f9h8G6
第四十六話「文禄」(6)

「徳川様のところにご挨拶にいってまいります」
葛西・大崎の普請の最高責任者・徳川家康のところに偵察にいくことを思いつく兼続
さっそく行動に移す。
徳川家康は、九戸討伐には井伊直政を派遣し、自身は大崎・葛西にとどまり、道路の補修や
岩出山に城の縄張りをしている。
「伊達殿のためにつくっておるという噂でございまするな」
「会津を没収されたのみで大崎・葛西を加増されるのであれば、伊達は大勝利じゃな」
苦い薬をのんだような景勝の顔である
0308日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/03/31(土) 23:49:07.91ID:8cgR/S4Z
第四十六話「文禄」(7)

「おお直江殿、久しいのう。此度は上杉勢にも骨折りをいただいた。御礼をもうす」
徳川家康、いつものように温容な雰囲気で迎えてくれる。

徳川様には徳がある。東国の大名は、みな心服し庇護を願っておる。最上など、次男を
小姓に出しておるほどじゃ。徳川様が九戸のように謀反を起こせば、東西を分かつ大戦に
なるじゃろうな。あらぬ方向に思考がそれる兼続。それゆえ、石田は警戒するのじゃ。

「九戸討伐も最終段階じゃな。前線は兵糧に困っているようじゃが、敵の本城に押し込
めておる。あと、一息じゃ」
「ところで」と兼続が切り出そうとしたところ
「伊達様がお見えです」
「お通しせよ」

「如何した伊達殿」
「それがしの領地、会津ばかりか米沢・伊達など本貫の地も没収されるという噂は真実
なのですか」
普段は冷静な伊達政宗も、今日ばかりは苛立っている口調で家康を詰問する。
傍にそれがしがいることに気がついてないようじゃな。
金箔の十字架を担いで入京し、書簡の鶺鴒の花押も目に針を通してないと申し開きして
一揆使嗾の罪を切り抜けたと安心していたら、関白殿下は一枚上手で、一揆と一揆鎮圧
で荒廃した葛西・大崎の地を治めさせることを企んでいたとは、流石じゃな。

「伊達殿、正式な命令は追ってくるじゃろうが、それは真じゃ。
そして岩出山がそなたの居城となる、わしが縄張りをした。こぶりじゃが、よい城じゃ」
「領地がここまで減らされると、家臣を養うことができませぬ、いっそ、すべての領地を
返上して、小姓になりたいくらいです」
伊達殿も徳川様に特別な親愛の感情があるようで、甘えたような無理筋のことを言う。
0309日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/04/02(月) 22:30:36.35ID:AARDlBZr
第四十六話「文禄」(8)

「それがしは、一揆扇動の汚名を雪がんとして、無理攻めをし、あまたの重臣・家来を
討ち死にさせておりまする。その結果が本領召し上げということであれば、それがしは
家臣に顔向けできませぬ」
たしかに。それに何千何万の一揆勢を殺して、そこを治めるということは難しいのう。

「関白殿下は、伊達殿の力量を買っておられるのじゃ。それゆえ難治の葛西・大崎を
任せるお考えなのじゃ。征明の戦闘序列が下令された。明との大戦がはじまるのに、
東国で一揆が再燃すれば、何もかも台無しじゃ。われら東国の領主は、責任重大なの
じゃ」
徳川家康、噛んで含めるように伊達政宗を諭す。
「それに、国替えは、悪いことばかりではないぞ。
わしも、先祖代々営々と経営してきた本貫の三河・遠江・駿河から関東に移されたばかりじゃ。
江戸は、川底みたいなところでな、地面を掘ると泥鰌がうじゃうじゃ出てくる。
毎日、泥鰌鍋じゃ。わしは、川の流れを変えるつもりじゃ。湿気が多すぎて体に悪い」
ふうむ。
「家臣も先祖伝来の地を離れて、わしが決めた石高の領地に分封した。
国替えによって、わしの意志が家中に貫徹できるようになったのじゃ。
徳川は国替えによって強くなったと言える」
伊達もそうすればよいと言わんばかりの徳川家康。
「しかし、徳川様は百万石加増されておられるわけで、それがしは半分に減らされておる
のですぞ」
「海があるではないか。海があれば、船で交易もできる。
そなたの若さ・才覚をもってすれば、前途は洋々じゃ
目先のことに囚われて焦ることはないではないか」
やはり、徳川様は重厚で篤実なお方なのじゃな。
危なっかしいところが欠片もない。家臣ばかりか、同僚たる諸侯の信望を集める所以じゃな
0310日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/04/04(水) 22:41:54.45ID:xKesBZoG
第四十六話「文禄」(9)

「伊達殿、お久しぶりでございまする」
兼続、伊達政宗に挨拶する。
「おお。これは気がつかなんだ。井伊か誰かと見間違えておったわ」
「ご承知と思いまするが、鶴松君ご逝去遊ばされた由。関白殿下も、さぞ落胆されて
おるのではござりませぬか」
「そうじゃな、秀次公が後継者になったというわけじゃな」

「しかし跡継ぎは難しいものじゃ。秀次公もこれからが大変じゃな」
家康がぽつりと独り言をいう。
跡継ぎの信康殿を殺してしまった家康公の言葉は重いのう。
信玄公も義信殿を殺しておる。権力の中心がふたつできるわけで、取り巻きも関係する
いよいよ、世渡りは難しくなるわけじゃな
0311日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/04/14(土) 21:32:23.24ID:0is/8KL+
第四十六話「文禄」(10)

「ところで、そなた利休殿に会われたそうじゃのう」
徳川家康、伊達政宗と兼続を茶室に招き入れる。
「はい。徳川様に宜しくお伝えくだされと仰せでございました」
「絶対的な権力の周辺では、予想もつかぬことがおきるものじゃ」

「利休殿が切腹された後、京には政道を批判する落書があったようでございまするな」
伊達政宗、言外に批判を滲ませる。

「関白殿下は、遠大な計略で京の街並みの大改造を行っておる。
やらねばならぬことなのじゃが、不満もあるのじゃろうな」
家康、言動は慎重細心だ。
0312日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/04/20(金) 23:02:58.97ID:njvzk8hB
第四十六話「文禄」(11)

「末世とは別にはあらじ木下の猿関白を見るにつけても という落首があったそうじゃな」
伊達政宗、情報通のところをみせる。
そういえば、利休殿が切腹する前に徳川殿・伊達殿は茶会に招かれておる、
伊達殿は最初で最後となったわけじゃが、
利休殿の最後に関係ある三人が茶会をしておるわけじゃが、偶然なのじゃろうか。

そこに本多正信が入ってきて、家康に書類を渡す。
「伊達殿、そなたの新しい領地は ええと これをご覧になればよい」
面倒になった家康、政宗に見せる。
「やはり米沢は没収されるのですか」落胆を隠せない伊達の声色。
「ものは考えようじゃ。領地が減らされたならば、新田開発・交易で補えばよい。
直江殿は、なかなかの民政家じゃ。方策をきいてみればよい」
徳川家康、なんでも知っておる余裕をみせる、それがしが、恐妻家ということもばれておるんじゃろうか。
0313日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/04/20(金) 23:16:18.06ID:njvzk8hB
<反省会>

「西郷どん なんか違うな。南野も頑張ってるし、なるべく悪い言いたくないのじゃが」
「原作を読んでないから、読む気もないけど、何とも言えぬが、基本を押えないと、
リアリティがなくなる。武家の娘が、一人歩きなど絶対にせぬことじゃ。篤姫様が
一人で外に出て行って、行方不明になったら、大騒ぎで、百人くらい腹切らないと
いけなくなるじゃろうね。縁談が進行中だったら、破談になるじゃろうね。
傷者になったと評価されるじゃろうね。
フィクションだから、杓子定規にキチキチ決めつける必要はないけど、基本は押えないと」
0314日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/04/22(日) 22:56:18.64ID:a5QYv5It
第四十六話「文禄」(12)

九月初旬、九戸政実は降伏し、反乱は平定された。
「なにやら、武勲の立てようのない戦じゃったのう」
景勝が不平を言う。
「明との大戦を控えておりまする。武勲を立てる機会は、山ほどございまする。
上杉の精鋭を損じなかったことを喜ぶべきかと。伊達は、重臣や名のある武者を相当
喪ったようでございまする」
兼続が慰める
0315日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/05/13(日) 22:39:47.88ID:+6l14GxR
第四十六話「文禄」(13)

「此度の戦勝おめでとうございまする」
秀次公の陣所に赴き、戦勝を賀する上杉主従である。
「骨折り大儀じゃった」
鷹揚に応じる豊臣秀次。
徳川、前田はもちろん、奥羽の諸将は全員集合じゃな。
みな、阿諛追従して取り入ろうと必死じゃ。

なにしろ、突然現れて、小田原に参陣しなかった領主を取り潰し、各地で蜂起した
一揆を圧倒的な大軍で制圧し、全土で検地を貫徹せんとする巨大な権力の後継者じゃから
無理もない。われらも、出遅れては、のちのち不味いことになるやもしれぬ。
特に、最上義光の取り入りようには警戒が必要じゃな。
庄内の裁定で、われら上杉が勝利したのは、石田などの肩入れがあったからじゃ、
それゆえ、最上は、関白殿下に取り入ることを諦め、秀次公に取り入ろうとしているのじゃ。
後々、庄内の裁定をひっくり返そうとしておるに相違ない。
最上が庄内を諦めるはずもない。海が欲しいのじゃ。

それにしても、いつものことながら、後味の悪い戦勝じゃな。
降伏してきた九戸政実を斬首にしたのは良いとしても、城兵も皆殺しにしたとは。
その必要はあったのじゃろうか。上杉が関わらなくて、むしろ良かったかもしれぬ。

「直江」
兼続が腹黒い悪だくみを考えていると、石田が傍に寄ってきた。
「上杉の軍役は五千じゃ、うち三千は渡海するつもりで準備してもらいたい」
初めて会った時から切れ者なのは知っておるが、最近は時間を手間をかけないようじゃ。
0316日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/05/13(日) 23:15:14.50ID:+6l14GxR
第四十六話「文禄」(14)

「石田、話がある」
祝宴の陣所から、石田を連れ出し、盗み聞きされないように見晴らしの良いところに
連れていく。

「本当に明と戦うのか。成算はあるのか」
「関白殿下は百戦百勝の名将じゃ。本能寺以来わずか十年で天下を統一した。
動員する将兵は、戦国を戦い抜いた精鋭じゃし、鉄砲の装備率もあがっておる。
明の軍勢が如何に強力であっても鉄砲の弾が当たれば死ぬじゃろ」
おそらく関白殿下の受け売りじゃろな。
「関白殿下は、確かに政戦両略の天才じゃ。戦に負けて逃げたことはあるまい。
そこが信長公や家康公と違うところじゃ。関白殿下の戦は、戦う前に勝利が確定しておる
圧倒的な物量の準備と綿密な調査が行われてきた。しかし、征明の戦はどうじゃ。
何も知らずに戦うことになるのではないか」
さらに畳みかける。
「それに、島津にしても、北条にしても、負けたがっておったのではないか。
関白殿下の政権の分国として生き延びることを考えてな。
ところが、明にそんなことが通用するのか。交渉が成り立つのか。
長恨歌を知らぬか。唐の皇帝は、京を謀反人の安禄山に占領されても、地方に逃げて
交戦しておるぞ。関白殿下は、朝廷の権威を背景に日本を平定したが、明にそれが通用
するのか。ともかく、情報が少なすぎる。そなたは、本当に成算があるのか」
0317日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/06/08(金) 23:50:35.57ID:Z3o3kb3Z
第四十六話「文禄」(15)

「関白殿下は、南蛮人の宣教師や博多の商人どもの話をよく聞いておられる。
われらには、わからぬ世界情勢をご存じなのじゃ。
南蛮のポルトガアルとかいう国が印度のモルカとかいうところを占領した。
これで、通商路は南蛮人の手に落ちたということなのじゃ。
関白殿下は南蛮人から唐天竺の通商路を奪回するために征明の戦を起こすのじゃ」
なんと。見当違いではないのかな。
0318日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/07/17(火) 23:12:24.26ID:xxLTylaT
第四十六話「文禄」(16)

「東国の大名どもも、そなたと同じ考えなのか」
石田にしては珍しく、人の意見を聞いてくる。
「東国だけではなく、日本国中の大名が、反対じゃと思うぞ。
関白殿下によって日本が平定され、ようやく泰平が招来されたのじゃから、
しばし、休みたいのじゃ。民も休ませてやりたいと思うのは人情じゃ。
むしろ、外征に乗り出す関白殿下の御心の内がわからぬなあ」
遠慮なく、ずけずけいう兼続。
石田に嫌われても平気なのか?
0319日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/07/29(日) 22:19:46.25ID:29CFsg5b
第四十六話「文禄」(17)

「関白殿下は、やることがなくなったのじゃ。あまりにも簡単に天下統一が成就したので
何をやればよいのか、わからなくなったのじゃ」
「天下統一の次の仕事が唐天竺まで武名を揚げる世界征服とは、あまりにも気宇壮大すぎる
じゃろ」
「あまりにも、簡単に天下統一が成就したので、関白殿下は、行くところ可ならざる
ことなしというような、全能感に囚われておるのじゃ」
石田も、本音をポロリと出す。珍しく、批判的じゃな。
「琉球や小琉球にも使者を使わし、服属を求めておるのじゃ」
0320日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/07/31(火) 22:59:57.01ID:4DdEQzZi
第四十六話「文禄」(18)

「そなたは自他ともに認める関白殿下の股肱の臣。
関白殿下をうまく補佐して、この事案を乗り切らねばならぬな。
知っておるか、日乃本が大陸と戦うのは、今度で三度目じゃ。
一度目は、はるか昔、都が奈良になる前、天智天皇の頃じゃ。
滅亡寸前の百済を救援するため大軍を派遣したのじゃが、白村江で大敗した。
そして大陸の足場を失った日乃本は、博多あたりに水城を造り、都も近江に移し、大陸
この時代は唐といったが、唐の侵略に備えた。結局、唐で安禄山の乱が起きたので、
唐は衰退したので、侵略はなかったのじゃが、政変が起きている。天智天皇の息子は、
天武天皇に滅ぼされてしまった。
二度目は、鎌倉の北条が元の侵略を防いだ元寇じゃ。台風が来てくれたおかげで、僥倖
にも撃退することができたが、この戦は、鎌倉の北条氏が滅びる遠因となった。
大陸への出兵は、九州征伐や北条攻めとは次元の違う覚悟がいるのじゃ。
そのことが、わかっていおるのか」
兼続、ここぞとばかり、石田に説教の嵐。
0321日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/08/09(木) 21:47:47.58ID:BWgm06eq
第四十六話「文禄」(19)

「関白殿下は、朝鮮・唐・天竺の地図を描いた扇子を持ち歩いて、いろいろお考えの様子じゃ。
明を平らげたら、都を寧波に移し、天竺征討に乗り出すと仰せでもある」
石田にしては、自信なさげに秘密を打ち明ける。
「速戦速勝というのは悪くないお考えじゃ。
長期戦は孫子が固く戒めるところじゃ。
常に、和平を考えながら、戦をするべきじゃな。
問題は、関白殿下のお考えじゃ。何を望んでおられるのか。
具体的には、勘合貿易の復活というところなのか。
名をとり、実をとる、穏当な解決策を関白殿下に納得してもらわねばならぬな」
問題は、戦況よりも、関白殿下のお考えじゃな」

「直江、また相談に乗ってくれ。都で、また話したい」
0322日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/08/18(土) 23:09:12.91ID:TbZKf6br
第四十六話「文禄」(20)

「秀吉公は、関白の職を秀次公に譲られ、ご自分は太閤を名乗られるそうじゃな」
春日山に凱旋した景勝と兼続、主従いつものように縁側に出て、月を愛でながら酒を飲む。
「九州に大きな城を造っておるそうでございまする。征明の戦の策源地とすべく石田などが
奉行をやってようでございまする」
都にいる、お船の指揮する諜報機関からの報告が連日届けられている。

「出兵は、明年三月か。日本国中の武者をこぞって、大明に攻め入るなど、開闢以来の壮挙じゃ」
景勝の武人の血が騒いるようだ。

五千の兵を九州まで派遣するとなると、ものいりじゃ。
また、留守になった国内で、一揆でも起きたら、天下に恥を晒すことになる。
年貢の徴税も強化しなければなるまい。石田などに手伝ってもらって、検地するべきじゃな。
いや、鉱山の開発を進めることも考えねばなるまいな。
御屋形様に後顧の憂いなく戦に専念していただくために全力を尽くさねばなるまい。

「毘沙門天の旗が、大明の都に翻る日もくるのじゃろうか」
景勝は景勝で、空想を進めておるようである。
0323日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/08/24(金) 22:16:02.41ID:8YN9fMCw
第四十六話「文禄」(21)

「夜分恐れ入りますが、石田様からの使者がお見えでございまする」
なんじゃろ、急用かな。
「それがしが、応対いたしまする」

平伏する石田の家臣の待つ書院に入り
「直江山城でござる。お顔をあげられよ」
「それがしは、石田の家臣、島左近と申すものでございまする」
おお、島左近、石田の一の家臣と聞いておるぞ。

「急用かな」
「いや。急用ではございませぬ、主君が、直江殿にご教示賜りたく、それがしが参上
した次第でございまする」
「何を、教えることがあるかな」
「征明の戦についてでございまする」
なにを考えておるんじゃろ。石田は。
本人が忙しいので、重臣を派遣してきたというわけか。
しかし、外様の陪臣に過ぎないそれがしに教えるようなことがあるんじゃろうか。
0324日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/08/26(日) 23:03:29.95ID:hkFBj/70
第四十六話「文禄」(22)

「こたびの戦は、関白殿下いや、もとい太閤殿下の思い違いから、始まったものでございまする」
「島殿、ご飯は食べられたのか。まだなら、ここに運ばせよう。それに、そのお話、御屋形様に
も、聞いていただこう」
食事が運ばれ、景勝も同席することになった。
「島左近、食べならが話せ。酒も飲みながら話せ。夜は長い」
景勝、前々から、島左近のことを気に入っていたようで、めずらしく、にこにこ笑い
ながら、挨拶する。

「太閤殿下は、対馬の宗氏に騙されておるのでございまする。対馬の宗氏は、朝鮮と
の交易で栄えた大名ゆえ、関白殿下にも朝鮮国王にも良い顔をしておったのでございまする」
ふうむ。
「関白殿下が、九州征討のおり、朝鮮に入朝を求めた時も、朝鮮は、単なる日本統一の賀詞を伝える
使者に過ぎないと誤解しておったようでございまする」
ふうむ。
「関白殿下は、朝鮮から使者が来たので、入朝したと誤解し、さらに征明嚮導をお命じになられた
のでございまする」
ふうむ。
「それを宗氏は、仮途征明とごまかし、朝鮮国王を納得させようとしたのでございまするが、さすがに
朝鮮国王は納得せず、こたびの戦になったのでございまする」
ふうむ。
「なにゆえ、そこまで宗氏の内情をしっておるのじゃろ」
景勝がもっともな疑問を口にする。
「対馬の宗は小西行長の婿でございまする。わが主君・石田治部は、小西と密談を
重ねておりまする」
ふうむ。
「小西殿も、和平を模索しながら、戦うということじゃな」
0325日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/09/18(火) 22:48:31.88ID:SWFHpYom
第四十六話「文禄」(23)

「主君が申しまするに、直江山城殿は、漢籍に明るい当代きっての知識人。
こたびの戦の帰趨をどのように予想されるか、よくよく聞いて来いという仰せでございました」
ふうむ。
「明との戦は、果てしない戦になるじゃろう。万一、僥倖にも明の都を落としたとしても、
戦は終わらぬ。明の皇帝は、都を移して、戦を続けるじゃろ。三国志でいえば、蜀の国に都を
移して、徹底抗戦してくるじゃろ。そこまで、攻め込むには、何年もかかるじゃろうな。
永久に終わらない戦となる。派遣された将兵は、明の大地で溶けるように損耗し、消滅するじゃろ」

「明の皇帝は、絶対に降参しないということですかな」
「そうじゃ。絶対にない。皇帝は宇宙の支配者。対等な存在は認めないのじゃ。
あるのは、臣下のみじゃ」
ふう。思わず溜息をつく島左近。
「太閤殿下も世界征服を志しておられる気宇壮大なお方じゃ。
中国皇帝の臣下になるようなお考えは欠片もないじゃろうな」
やおら言葉を切り、島左近の顔をみつめて
「われらは、死ぬまで永久に戦うことになる。国富は失われ、民草の労苦は計り知れ
ないものとなる」

「関白殿下は、鶴松君を喪った悲しみを乗り越えるために、大戦に乗り出そうとしておる
わけですから、諫言もなかなか難しいと主君・石田治部は申しておりまする」
「また、淀の方様に作っていただけばよいのではないか」
どうせ、不倫で生まれた子なんじゃから、一人でも二人でも作ればよいのじゃ。
「天下のためじゃ。民草を守るためじゃ。この場合は許されるのではないか」
ほー。小さなかすかな溜息をつく、島左近。
「太閤殿下が後継と認めさえすれば、どこの馬の骨でもいいのじゃ。
石田が段どれば、すらすらことは進むじゃろ」
本当に腹黒い直江兼続。謙信公が聞けば卒倒するかもしれないようなことを言う。
0326日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/09/18(火) 22:48:49.03ID:SWFHpYom
第四十六話「文禄」(23)

「主君が申しまするに、直江山城殿は、漢籍に明るい当代きっての知識人。
こたびの戦の帰趨をどのように予想されるか、よくよく聞いて来いという仰せでございました」
ふうむ。
「明との戦は、果てしない戦になるじゃろう。万一、僥倖にも明の都を落としたとしても、
戦は終わらぬ。明の皇帝は、都を移して、戦を続けるじゃろ。三国志でいえば、蜀の国に都を
移して、徹底抗戦してくるじゃろ。そこまで、攻め込むには、何年もかかるじゃろうな。
永久に終わらない戦となる。派遣された将兵は、明の大地で溶けるように損耗し、消滅するじゃろ」

「明の皇帝は、絶対に降参しないということですかな」
「そうじゃ。絶対にない。皇帝は宇宙の支配者。対等な存在は認めないのじゃ。
あるのは、臣下のみじゃ」
ふう。思わず溜息をつく島左近。
「太閤殿下も世界征服を志しておられる気宇壮大なお方じゃ。
中国皇帝の臣下になるようなお考えは欠片もないじゃろうな」
やおら言葉を切り、島左近の顔をみつめて
「われらは、死ぬまで永久に戦うことになる。国富は失われ、民草の労苦は計り知れ
ないものとなる」

「関白殿下は、鶴松君を喪った悲しみを乗り越えるために、大戦に乗り出そうとしておる
わけですから、諫言もなかなか難しいと主君・石田治部は申しておりまする」
「また、淀の方様に作っていただけばよいのではないか」
どうせ、不倫で生まれた子なんじゃから、一人でも二人でも作ればよいのじゃ。
「天下のためじゃ。民草を守るためじゃ。この場合は許されるのではないか」
ほー。小さなかすかな溜息をつく、島左近。
「太閤殿下が後継と認めさえすれば、どこの馬の骨でもいいのじゃ。
石田が段どれば、すらすらことは進むじゃろ」
本当に腹黒い直江兼続。謙信公が聞けば卒倒するかもしれないようなことを言う。
0327日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/09/20(木) 21:51:27.97ID:aw4FZdvy
第四十六話「文禄」(24)

「皇帝を虜にしたら、明も降参するんじゃろうか」
景勝が疑問を口にする。
「いいえ。捕虜となった皇帝は廃位となり、血縁の者が新たに即位し、新皇帝となり、
徹底抗戦することになると思いまする。
そもそも明の現在の皇帝は、何十年も朝廷に出てこないような男でございまする。
戦に出てくるとは思えませぬな」

「やはり、太閤殿下の御心を変えるほうが、まだしも容易であるということですかな」
島左近、一気に老け込んだような顔でつぶやく。
「関白殿下は、家臣を信用しきれてないから、常に戦を構えて、緊張状態に置いておか
ねばならぬという強迫観念があるようじゃな」
兼続、考えながらつぶやく。
「やはり、信長公が家臣に裏切られたのを目の当たりにしたせいなのじゃろうか」

「そういえば、そなたは筒井順慶の家臣じゃったそうじゃな。山崎合戦のおり
洞ヶ峠で形勢を観望しておったとかいうことじゃが」
すかさず景勝、軍談の取材を始める。
まったく御屋形様は、軍談がお好きじゃな。
0328日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/10/11(木) 23:28:43.73ID:vj83EPkn
第四十六話「文禄」(25)

「それがしの亡君・筒井順慶にとって、明智さまは大恩あるお方でございます。
松永久秀との地獄のような果てしない闘争を止めてくださったのは明智様でございました。
信長公から大和一国手柄次第とのお墨付きを頂いておった松永久秀との戦は、
織田家全体を相手にすることでございましたから、大変でございました。百戦百敗、
興福寺のお力で、辛うじて抗戦することができておったのでございまする」
ふうむ、確かに、三好長慶の重臣として天下を治めていた松永弾正が相手ならば
悲惨な戦いとなるじゃろうな。
「その状況から、明智殿が救い出してくださったのでございまする」
0329日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/10/15(月) 23:14:55.13ID:RVChQTWj
第四十六話「文禄」(26)

「筒井家は明智殿の口利きで信長公に臣従することができ、松永と和睦することができて
われら家臣は心底ほっとしたのですが、信長公は本当にとてつもないお方でございましたな」
ふうむ。
「われらは、大和と南山城の守護に抜擢された原田備中殿の与力として、本願寺との戦に出陣したのですが
相手は、雑賀の鉄砲隊。暴風のような銃弾を浴びせられて、原田殿は戦死、先行していた明智殿の部隊は、
敵中に孤立、全軍瓦解するような状況になったのですが、信長公自ら、軽兵を率いて、前線で奮戦され、
戦況を逆転されたのでございまする」
「ふうむ、原田殿とは聞かぬ名じゃが、しかし、大和・南山城の守護に任ぜられたのであれば、柴田勝家や
太閤殿下を上回る重臣じゃったのじゃな」
景勝、素朴な感想を述べる。
「長篠の戦では、鉄砲奉行として鉄砲隊の指揮官の一人じゃったと聞いておりまするが
流石、雑賀衆は一枚も二枚も上じゃったということでござりまするな」
ふうむ。
「しかし、信長公は、恐れを知らぬお方なのでござりまするな。万余の大軍、しかも
雑賀の鉄砲隊が待ち構えているところに、わずかな兵で突撃するのですから」
島左近、話を自然に本題に戻す。
「信長公は、徹底的に理知的なお方なんじゃろうな。本願寺との戦の緒戦で、大敗す
れば、戦局全体に影響すると判断され、自分以外に余剰戦力がないことも理解され、
その通り行動されたわけじゃから」
0330日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/11/06(火) 22:28:11.95ID:Ny8yUyv5
第四十六話「文禄」(27)

「信長公は、知勇兼ね備えた名将じゃということか。しかし、何故、謀反がおこるのじゃ」
景勝がつぶやく。
「賢き人は、相手も自分と同じように賢明であると思い込んでしまうところがありますな。
信長公は、必要があれば、土下座することも辞さないお方でございまする。理性で感情を
完全に統制できるお人でございまするが、同じことができるお人は、そんなに多くありませぬ」
「そういえば、信長公は謙信公に屏風を送ってきたことがあったな。謙信公に天下の政を譲る
という寓意が込められておるといわれる洛中洛外図じゃ」
0331日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/11/07(水) 22:58:30.34ID:C5Df9Nee
第四十六話「文禄」(28)

「信長公は、どのようなお人じゃったのじゃろう」
景勝が質問する。
「それがしは、外様の陪臣、詳しく知っておるわけではございませぬが、わが亡君・筒井順慶
は、信長公に拝謁するときはいつも緊張しておりましたな。御心の内が分からぬと、いつも
申しておりました」
ふうむ。
「信長公に謀反したものは、荒木村重・松永弾正・明智光秀、いずれも、信長公に優遇されて
おったものばかりじゃな」
「新参者でもございますね」
「信長公は、確かに優遇してくださったが、目的を達成したら、弊履のごとく捨てられると
思わせるような言動があったのじゃろうか」
「確かに、佐久間様など、理不尽な折檻で高野山に追放されましたな」
「佐久間信盛殿は、一貫して信長公に忠義を尽くされ、筆頭家老として織田家中でも
重んじられてこられたお人でござりまする」
ふうむ。
「それなのに、本願寺が降伏した直後、城地引き渡しの際、失火で本願寺が全焼した
ことに、激怒された信長公は、佐久間殿を追放したのでございまする」
「折檻状を書いて、何年も前の朝倉攻めで口答えしたことなどを列挙して、佐久間殿を
追放したのでございまする」
忠義一筋の佐久間殿でさえ、ひとつの失敗ですべてを失い、追放されるのであれば、
みな明日は我が身と思うじゃろうな。
0332日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/11/11(日) 22:29:43.63ID:5TayYYcW
第四十六話「文禄」(29)

「佐久間殿が率いていた軍勢を引き継いだのが、明智殿じゃったから、信長公に対する
反感も引き継いだのかもしれませんな」
島左近、なかなか穿った見方をする。
「しかし、明智殿は、佐久間殿を追放するために信長公が書いた折檻状のなかでも、一
番に激賞されておったのでございましょう」

「しかし、天正十年になると羽柴殿もとい太閤殿下が、中国戦線で赫々たる戦果を挙げ
る反面、明智殿は武運に恵まれておりませんでしたな」
そうじゃろうか
「武田攻めは、信長公とともに出陣したにもかかわらず、先陣の信忠公の軍勢が武田を
滅ぼしたので無聊をかこっておったようでござりまする」
そういえば、武田攻めのおり、明智殿は信長公に足蹴にされたとか噂をきいたことがあ
るな。
「四国攻めの総大将を外されたことも、大変な打撃だったかもしれませぬな。
明智殿の重臣・斎藤利三の妹であり、信長公に対する取次も明智殿がやっておったので
ござりまするが、親しすぎると思われたのか、総大将を外されたのでござりまする」
ふうむ。
「代わりに起用されたのが、丹羽長秀殿で、副将として信孝公を補佐することになった
のでござりまする。」
「そして代わりに、毛利攻めをしておる羽柴殿の救援として出陣することになったわけ
じゃな。武田攻めと同じく無聊をかこつことになると思われたわけじゃな」
景勝が武人らしい感想をいう
「しかし明智殿は九州の名族・惟任を名乗っており、九州攻めで活躍することが期待さ
れておったのではござりませぬか。むしろ、戦に明け暮れ、追いまくられる暮らしに
嫌気がさしておったのではござりませぬか」
兼続が遠慮がちに反論する
0333日曜8時の名無しさん
垢版 |
2018/12/14(金) 22:39:11.52ID:CNKF1Ae0
第四十六話「文禄」(30)

「ほう。明智は、うんざりしていたというわけか。今のわれらと同じように」
景勝、かなり危険な発言をする。
「明智は、六十を過ぎておったということでございまするから、うんざりしておったこと
は確かでございましょうな」
そうなのだ。ようやく、平和が到来したと思ったら、今度は征明。
明智の心境が少しわかったような気がした三人である。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況