>牛若の意味
五十の宴には清盛を父と慕う無邪気な牛若も乱入してきた。
たしかにそこだけ見れば唐突感がある。牛若が平家に育てられ清盛を父と慕っていたという割には、義経大河でない以上それまでさしたる描写がなかった。
しかしかなり後、弁慶と「再会」し真実を知った義経が母常盤に別れを告げにいくシーンで、常盤は「いかなる事情であったとしても、
入道様はそなたの父代わりになって育ててくださったお方。その恩を忘れて刃を向けようなどと、ゆめゆめ思うてはならぬ」「母は許しませぬ」
と義経を諭した。この場面を唐突なものとしないためにも、五十の宴で懐いた義経が押しかけてきたシーンは意味があった。

>経盛を起用して
実際の能力としても、平家歌人の大エースは名だたる武人歌人であった忠度だろう。
経盛はキャラ的にいって武の教盛と対比された文系キャラで、二人合わせて一人前(時忠が茶化し、清盛も最後遺言でほほ笑む。
壇ノ浦では二人一緒に入水した旨ナレ朝)。つまり一人では半人前なのだから、摂関家との「文化闘争」となった「歌合戦」のエースにはちと不足。
つまり、あそこで登場した忠度は、兄弟全員だして見せ場を作ってあげましょう以上の意味をもち、そこには意外性ではなく必然性があった。
残念ながら一の谷は省略せざるをえず、(ノベには歌が紹介されているが尺なし)熊野踊りの懐かしい回想と共に退場したが、正直、一の谷での奮戦よりも
重要な貢献を平家にしてくれたのが歌合戦回であり、それに相応しい人選だったと思う。
なお、清盛兄弟の重要度は、家盛(初期)=頼盛(後期)〜いずれも正妻宗子の子>忠度〜熊野育ち>経盛=教盛〜忠盛が「外で作った3と4」の順だろう。