「貴国は」
と西郷はいった。
「薩摩を欲する、という設定にしてほしい」

これを聞いたロッシュは、不思議そうな顔をして
「薩摩は何を産するか」
とたずねた。
「サツマイモを産する」
「芋は、間に合っている」
「では甘藷を産する」
「砂糖も、間に合っている。生糸はないのか」
「ない」

ロッシュは、おしえさとすように
「植民地というものは、得て利益があるから得るのだ。
いま貴国を見るに、わが欲するものを何も産せぬ。
官吏の給料がかかるばかりである」
といった。

西郷は、うつむいた。