第十三回「攻防赤坂城」

高氏たちは叔父の上杉憲房邸に滞在していた。そこへ北畠顕家と名乗る少年公家が一人で訪ねてきて、
高氏に面会を求める。憲房は顕家が後醍醐帝の側近中の側近・北畠親房の息子であることを教え、高氏
に「用心めされませ」と言う。高氏が廊下を進むと、庭で大高重成たち家臣が弓を手に騒いでいる。何事か
と高師直に 聞くと、顕家が彼らの弓を見てあざ笑ったので腕比べをすることになったのだという。的(まと)
が見あたらないので高氏が師直に尋ねると、なんと松の枝に糸 でつるした一本の針が的だと教えられて
高氏は驚く。大高が三度外した後で、顕家が弓に矢をつがえた。狙いが定まると顕家は静かに目を閉じ、
矢を放った。矢 は見事に針を射落とし、大高たちや高氏は驚嘆する。