第12話「笠置落城」

正成はついに後醍醐帝と対面する。花山院師賢が帝の言葉を取り次ぐと言うが、後醍醐帝は自ら
「兵衛(ひょうえ)、おもてを上げよ」と正成に直々に声をかける。正成はその声に応じて顔を上げ、
即座に下げる。後醍醐帝が「兵衛、気強う思うぞ」と声をかけると、正成は平伏したまま「ははっ!」
と大きく答えた。「さっそくではあるが、関東を破る手だてはあるか。忌憚無く述べよ」と護良親王が
正成に問う。正成は幕府軍が大軍であること、関東武士の強さなどを述べて「かかる関東を破る
手だてはございませぬ」と率直に答える。

しかし「柿の実も熟れれば地に落ちまする。関東が自ら崩れれば我らに利がある」と正成は付け
加える。「それはいつ」と問う護良に「わかりませぬ」と答えた正成は「勝たぬまでも負けぬいくさは
ございます」と述べ始める。彼の戦略とは関東に火の手が上がるまで負けぬよう、各所に兵を分散
させて蜂起し敵を攪乱させ続けるというものだった。「この山を守るなら、この山を離れることでござ
りまする!」と断言する正成に、「げにも」と後醍醐帝は感嘆する。」