201 

>私が気になるのが、近藤勇は無能で、実質的には土方歳三が新選組を取り仕切っていたというものです。
>調べれば調べるほど、どうにもわからなくなっていく。確かに土方には若い頃から、リーダーシップや聡明さがあった
>とされる証言はあります。
 
>けれども、教養や教育面では近藤と比較すると見劣りしてしまうところはある。土方は多摩時代俳句を趣味しており、
>辞世は和歌です。
>一方で、近藤の場合は関羽を崇拝しておりました。辞世は漢詩であり、かつ自らの境遇を文天祥になぞらえている。近
>藤の教養はかなりのものです。といっても頭でっかちということもなく、政治力もあった。一会桑政権の切り札として
>動き、幕府の政策にまで意見できる先進性がありました。
 
>新選組だって、身分を問わない戦闘集団としては奇兵隊のような側面はある。西洋式の医療、食生活、軍事訓練も取り
>入れていた。刀槍頼りの時代遅れ集団とはされがちですが、それは屋内戦闘や逮捕を主軸とした彼らの任務を考えれば
>妥当なところです。
>新選組の任務は、いわば憲兵のような性質もあります。近代における憲兵は、ナポレオン戦争以降増えていった組織形
>態です。幕府なり会津藩がその影響をどこまで受けていたのか、私もはっきりと理解できてはいない。けれども、フィ
>クションでさんざん言われるほど時代遅れというわけでも、西洋思想と無縁であったわけでもありません。
 
>そういう組織を運営する近藤が、愚かで素朴な人とは思えません。関羽のような大人(たいじん)としての振る舞いを
>意図的にしていたように感じられる部分はありますけれども。
>新選組は近藤勇が動かしていた。そんな当たり前のことに、違和感があるとすれば、それは『燃えよ剣』であるとは思
>えます。現に、『鞍馬天狗』はじめ司馬以前のフィクションでは、土方より近藤が前面に出ていた。変わった重要な起
>点はどうしたって司馬遼太郎でしょう。

続きます