【明治の罠】●小見出し・“明治礼賛”の罠
 朝ドラでもなく、大河の話です。『青天を衝け』は作ることそのものに問題が発生する可能性が高い。危険なので、『麒麟がくる』なり『鎌倉殿の十三人』を延長する方がまだよいのではないかと思います。吉沢亮さんはじめ、出演者へのお詫びは何かするにせよ。そこは私が考えることでもありませんので。
 汚名を被りかねない大河主演にしたら、むしろキャリアに停滞期が訪れそうで気の毒ではありませんか。吉沢さん以下、出演者のキャリア、VOD時代ともなれば特に海外でのこともふまえると、再考をした方がよいと思えるのです。
 この話は、あとでいつかじっくり語るとしまして。
 司馬遼太郎の話です。
 彼の作品で、最も人気があるとされるのは想像がつきます。『坂の上の雲』です。私の家にも、初版本全巻がかつて揃っておりました。
 そんな『坂の上の雲』の映像化だけは、してくれるな。司馬遼太郎本人は厳命していたそうです。海外版もない。他の作品は、翻訳もされているのに、これはないのです。
 日本では屈指の人気なのに、海外版はない。この時点で、不思議なものはある。どういう思惑があるのかわかりませんが、実害はもう出ていると思えなくもありません。
 企業トップにアンケートを取ると、好きな司馬遼太郎作品として、『坂の上の雲』があげられたというのは有名な話。けれども、繰り返しますが、海外では認識されていない。
 私なりに、日露戦争の書籍は海外のもの翻訳版も含めて読んでみました。ギャップにめまいがするほどではある。日本人向けですと、『坂の上の雲』の副読本としてのニーズを満たしたいものがともかく多い。
 「未曾有の危機に立ち向かう姿に学べきだ!」
 そう日本人がうっとりしている一方、世界はこうなると。
 「日露戦争勝利の背後には、英米の支援があると。その英米を敵に回せば、そりゃ第二次世界大戦は負けますよね」
 危険です。
 司馬史観は、【明治までは素晴らしくて、昭和だけが突発的に駄目になった】ような、そんな雑な誘導があります。けれども、どうして転落したのかという理由、それが芽生えていたことすらたどれない。

〔続きます〕