【栄一はここでガーッと知識を披露します。本作は、この手の説明セリフをもう少しわかりやすくして欲しい。なにより主人公だからって栄一が全てを語りすぎのように感じます。
  個人に依存しすぎる組織はいざというとき危うい。もし渋沢栄一に何かあってもいいように、頭脳は分散させておくのがリスクヘッジでしょう。これは何も言いがかりをつけたいのではなく、発想として危険だと思うのです。】(1ページ目)
 → 後半の養蚕関連は別にして、改正掛全般としては皆からの提案を聞き入れていくシーンもあり、栄一のワンマン体制ではなかったはず。

 【この手の英雄史観は、たしかに大河と相性がよろしいのですが、世界的に見ると“オワコン”です。アメリカ独立戦争やナポレオン戦争、第一次世界大戦の絵を比較するとわかりやすい。
  前者はワシントンやナポレオンが大きく描かれている一方、後者は名もなき兵士の群像が描かれています。市民による革命、徴兵制を経て、人間は悟りました。えらい英雄が現れ、歴史をズバッ!と変えるわけじゃない。民衆一人一人が変えてゆくのだと。
  昨年の『麒麟がくる』は、そうした世界基準の歴史観を備えていました。それが駒、東庵、伊呂波太夫、菊丸たち。彼らのような歴史に名を残さずとも活躍した人間がいるからこそ時代は動きます。しかし今年は逆行している……。】(1ページ目)
 → ワシントンは措くとしても、アレキサンダー・ハミルトンやベンジャミン・フランクリン、ジェームス・マディソン等の「英雄」の存在とアメリカ合衆国との関係を武者氏は把握しているのだろうか?
  『麒麟』が世界基準の歴史観を備えていたという主張については批判する気にもなれません。武者氏による『タイムスクープハンター』のレビューを待つこととしましょう。

 【千代とうたが大きな屋敷へやってきます。これを手放しで喜んでもよいのかどうか。出世を喜び、威光を自慢するようにも見えます。】(1ページ目)
 → 千代がうたを戒めていたシーンを観ていなかったのか?

 【ペリー以来続々と来日した外国商人にとって、一番の目玉はなんといっても生糸。政治とも少なからず関係があり、幕府と交流を深めたフランスは、生糸利権を独占できるようになりました。600万ドルの借款の背景にも、条件として生糸優先貿易が裏にはあった。
  もちろん本作では全く描かれていないので繋がりも出せません。せっかくの栄一得意ジャンルなのに伏線を張っていないことが不思議でなりません。
  話を進めますと、フランスの動きに対し、反発したのがイギリスとアメリカの商人です。そんな商人の動きもあったからこそ、イギリスが薩長の倒幕を支援したともいえる。
  ハリー・パークスあたりからすれば、「お前ら、わかってんだろうな? 生糸権益ありきで支援したんだぞ、あぁ?」と、ねじ込んできそうな話です。】(1ページ目)
 → 対日生糸利権(生糸交易を希望していたくらいならともかく)という話は初耳ですので、詳しい方、ご教示願います。
  なお、武者氏は『花燃ゆ』レビューでは(昨日の『青天』と同様に)明治初期の日本産生糸の品質は低かったと述べていたと記憶しています。

 【大久保利通は怒り、ねじ込んできてガンつけ合戦になります。前回のレビューで懸念だと申し上げていましたが、早速、大久保が悪役として描かれています。ことあるごとに栄一と対立する嫌なやつになりそうで辛い。
  「旧幕臣のくせに感じ悪いよね〜」みたいなお局発言をする大久保になりつつあり、維新三傑の一人をどういう扱いなのでしょう。大久保は素晴らしい。しかし栄一にも素晴らしいところがある。両者に一長一短あると描けないものでしょうか。】(2ページ目)
 → どんなドラマにも一長一短あるとレビューできないものでしょうか。