【西日本新聞】嫌韓意識の背景は、かつて『日本よりも下』だった国を見下したいから

『週刊ポスト』9月13日号の見出しが大きな問題になった。表紙には「『嫌韓』ではなく『断韓』だ 
厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」「『10人に1人は治療が必要』(大韓神経精神医学会)−怒りを抑制できない『韓国人という病理』」という文字が並び、批判が湧きあがった。
版元の小学館は「誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました」と謝罪したものの、雑誌の回収などはなされなかった。
右派メディアでは、中国や韓国に対して以前から過激な言葉が浴びせられてきたが、『文芸春秋』(10月号)のような伝統ある総合誌でも「日韓断絶」という見出しが躍っている。
背景には、何があるのか?「1937年と似た憎悪の煽動(せんどう)」(『週刊金曜日』9月13日号)では、『週刊ポスト』が想定する読者層に注目する。
問題になった同じ号には「50歳すぎて『はじめての女とのセックス』入門」や「『9月バテ』の対策 中高年男性に急増中」などの見出しが並ぶ。
編集部がターゲットにしているのは、明らかに中高年の日本人男性だ。
なぜ彼らは、嫌韓意識を募らせる傾向があるのか。彼らは高度経済成長からバブル経済を経験してきた世代で、アジアの中で日本が圧倒的な経済大国だという自負心をもってきた。そのため、経済規模で中国に追い抜かれ、国際的地位の低下に直面している現状は受け入れがたい。
そんな中、「無理に優越感を味わいたければ、かつて『日本よりも下』だった国を敵視して見下す本や雑誌記事を読み、麻薬のように耽溺(たんでき)するのが一番手っ取り早い」。
「嫌韓」の背景には、日本人中年男性のアイデンティティ・クライシスがあるというのだ。