人というのは、相手によって本音と建前を使い分けることができる生き物だ。
ここしばらく険悪なムードを漂わせてる男女二人ゆういちろうとあつこにとってこの人物も例外ではなかった。


「やっほー!久しぶり〜!」
「わぁ、だいすけさん☆」
「また来たんですね☆」

大袈裟に喜んでみせてる建前の姿に気付いてないのか満面な笑みで迎えてる二人を見ただいすけは得意気になって頷く。

というのも最近二人の様子がおかしいという連絡を貰ったのである。

あるコーナーで笑ってたあつこはずっと無表情でゆういちろうは滑ったままで終わるし、オープニング皆で手を繋ぐ場面でゆういちろうは人差し指だけをあつこに差し出してるという。
その上、なあにくんでは、「人をダメにする魔法の水なんだっけ?」「相手にも悪影響な魔法の煙なんだっけ?」と、それぞれよく分からないアドリブを入れてくるという。

「最近仕事はどう?」
「やっぱり子どもたち居ないのは寂しいですね。あ、ガム食べます?」
「早くコンサートもしたくて仕方ないです。良かったらお水飲みますか?富士山から何とかっていう天然水ですよ」
「ありがとう、両方頂くよ」

後輩のおもてなしにフッと笑い、ゆういちろうから貰ったガムを胸ポケットにしまい、あつこから貰った水を一杯頂いた。

「実は、最近君たちの仲に暗雲が立ち込んでるという噂を耳にしてね」