幕末もの最高傑作「翔ぶが如く」

「大河ドラマ」と名はつけど、近年の大河ドラマとは別物と思った方がよい。
たとえば、近年の大河ドラマで定番の「女パート」。そのようなものはない。
しかし、本作品の方に登場する女性に対しては真に愛おしく思い、歴史上重要な役割を持っていたのだと納得させられる。
作り手が「押しつけ」などしなくても、視聴者はそれぞれの感性で感動するのである。

三木のり平が演じる、江戸火消しの親分・新門辰五郎がいい。
西郷隆盛と徳川慶喜の双方に肩入れして狂言回しのような役割を演じる。
この、いかにも人間的に善人である辰五郎が、追放された慶喜に寄り添うことを最後に選択するところなどは、明治維新=正義と考えている視聴者の心に一石を投じるのではないかと思う。
辰五郎と西郷が上野で今生の別れをする場面は、今でも涙が出てくる。

佐野史郎、益岡徹、内藤剛志、緒形直人といった、今や大ベテランである俳優たちが鬼気迫る薩摩志士を演じる。
その迫真の演技は、まるでこの時代の薩摩志士たちの魂が乗り移っているのではないかと錯覚するくらいだ。

「幕末ものって面白いらしいけど、まだ読んだり見たりしたことないんだよね、興味はあるんだけど」という方には、本当にお薦めだ。

これを見ないと人生1つ損しているかもとくらいいえる。