原作は、故司馬遼太郎の『翔ぶが如く』である。
原作は、明治時代から開始するため明治維新までを描いた第一部は他の司馬遼太郎作品によって補完されながら描かれている。
しかし、それが他の司馬遼太郎作品の魅力と相俟ってこの作品が歴代大河ドラマの中でも最高傑作といっても過言ではないドラマに仕上がった理由ではないだろうか。

西郷隆盛役の西田敏行
大久保利通役の鹿賀丈史
江藤新平役の隆大介
など……

いずれも一度みたら忘れることができない魅力的な役者ばかりだ。
江藤新平役の隆大介はまさに江藤新平が乗り移ったかのような鬼気迫る演技でみるものを圧倒する。
出演は第二部からであり、第1話から第13話の「佐賀の乱」までのわずか12話にすぎない(第2話には登場しないため出演回は全12話になる)。
しかし、そのわずか12話で間違いなく視聴者の記憶に残る江藤新平を演じたのではないだろうか。
また、大久保利通役の鹿賀丈史も最後まで魅力的な大久保利通役を演じきっていた。
特に、海外に行って髭を伸ばしてからの風格がいかにも絶対的権力者のそれを示していて素晴らしかった。
髭を伸ばすまでは胃弱の大久保一蔵の延長でしかなかったが、海外から髭を伸ばして帰ってきた時には明治の最高権力者の姿がそこにはあった。
西郷隆盛役の西田敏行の演技も素晴らしかったといえる。
最後まで「情」の人として私学校の仲間たちを守るために自らの命を託していく姿はまさに歴史上の西郷隆盛そのものだったのではないだろうか。

西郷隆盛は、明治10年(1877年)西南戦争最後の戦いである城山の戦いで敗れて命を落とした。
士族の特権を剥奪するなどの急激な明治新政府のやり方についていけなかった人々の不満と明治維新の矛盾を一身に背負って死んでいったのだ。

西南戦争には最初から最後まで展望はなかった。
そもそも、西郷隆盛自身が積極的に戦いを仕掛けたものではない。あくまでも、私学校の仲間を守るために士族の不満を抱えて戦いの渦中に巻き込まれていったのだ。
歴史にイフはないが、仮に西郷隆盛や江藤新平による第二の維新が成功して改革が進んでいったらどうなっていたのだろうか。興味は尽きない。