「いらっしゃい!今サラダを作っているから座って待ってて!」
ブレスレットをつけたままの手で雑に野菜を千切り、洗面器に放り込む、だらしない身体に成り果てたレイチェルを暫く見つめていた
彼の中で、何かがキレた。
付き合っている間に溜めこんだうっぷんを晴らすかのように、パリジャンは彼女を口汚く罵り、アパルトマンを後にした。

冷たくなった料理と洗面器に残った千切った野菜。記念日に起きた酷い出来事を受け入れられないレイチェルは、
彼が持参したワインの栓を抜き、そのままだらしない身体に流し込む。
ボトルが空になる頃、彼女は酔いつぶれてそのまま眠り、深夜しなびた野菜の入った洗面器に嘔吐した。

花の都での幸せは所詮浮世の夢だったのだと教えてくれた洗面器は、ロンドンに戻ってすぐに捨てた。
そして新たな食の冒険に出掛けたのであった。