そのあくる日もカピ子は、ドングリをもって、兵十の家へ出かけました。兵十は物置で縄をなっていました。
それでカピ子は家の裏口から、こっそり中へはいりました。
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。とカピバラが家の中へはいったではありませんか。
こないだうなぎをぬすみやがったあのカピバラめが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」　兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。
そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。
カピ子は、ばたりとたおれました。
兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、土間にドングリが、かためておいてあるのが目につきました。
「おや」と兵十は、びっくりしてカピ子に目を落しました。
「カピ子、も前だったのか。いつもドングリをくれたのは」
カピ子は、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。