朝鮮人が倭国へ渡来する場合、倭国が森林と雑草に覆われた不毛の土地であろうとも、生活手段の基盤となる稲作が、
倭国渡来の明白な目的・理由であった。広大な土地に恵まれた中国人の場合、生活維持のため殊更に倭国へ渡来する理由は希薄である。
渡来した者があるとすれば、好奇心の強い数えるほどの人々であっただろう。まして、中国の上層階級の人が渡来したなどとは想像すらできない。
朝鮮からでさえ、王朝などの上層階級が渡来したのは七世紀になってからである。
三世紀ごろの「卑弥呼の時代」に文字を書ける者はいず、同時代に書かれた中国の歴史書「三国史」と倭国で初めて文字で書かれた文献「記紀」
までの間にはあまりにも遠い時が流れている。