>>706
清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。さばかりさかしだち、真名まな書き散らしてはべるほども、よく見れば、まだいと足らぬこと多かり。
 かく、人に異ならむと思ひ好める人は、かならず見劣りし、行末うたてのみはべれば、艶えんになりぬる人は、いとすごうすずろなる折も、もののあはれにすすみ、をかしきことも見過ぐさぬほどに、おのづからさるまじくあだなるさまにもなるにはべるべし。そのあだになりぬる人の果て、いかでかはよくはべらむ。