とある書評

中公新書 地図と愉しむ東京歴史散歩 地下の秘密篇
竹内正浩 著

東京新聞(夕刊)2016年11月29日/渡邊十絲子(詩人)

 突然ですが、「ブラタモリ」お好きですか(NHKの番組ですよ)。
わたしは大好き。でもひとつ不満がある。それは、地方ロケに行くようになった現在のシリーズよりも、
東京のまちなかだけを地味にうろついていた初期シリーズのほうがだんぜん高品質だったことである。
 タモリが路面に這いつくばって高低差を観察している横を住民が迷惑そうに通り過ぎていく、
あのいたたまれない感じがこの番組のキモだったのに。「招かれて拝見する」ときに、大事なものなんか見えない。
「頼まれてもいないのに覗きに行く」から、輝ける発見があるのだ。