(3)民法761条は,婚姻生活において日常の家事処理に伴う債務は,夫婦のいずれが名義人であっても,
実質的には夫婦共同の債務であること,また,日常家事について取引する相手方は,表意者が夫婦のいずれで
あっても,夫婦双方が法律行為の主体と考えるから,相手方保護の見地からも,日常家事債務については
夫婦が連帯して責任を負うことと定めたものと解される。以上の趣旨に鑑みれば,同条は,上記連帯責任発生の
前提として,夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することも規定して
いると解するのが相当である(最高裁判所昭和44年12月18日第一小法廷判決・民集23巻12号2476頁参照)。
 そして,民法761条にいう日常の家事に関する法律行為とは,個々の夫婦がそれぞれ共同の生活を営む
うえにおいて通常必要な法律行為を指すものであるから,その具体的範囲は,個々の夫婦の社会的地位,
職業,資産,収入等によって異なり,また,その夫婦の共同生活の存する地域社会の慣習によっても異なると
いうべきである。しかし,上述のとおり,同条が夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護目的とする規定で
もあることからすれば,上記具体的範囲は,単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその
行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく,さらに客観的に,その法律行為の種類,性質等をも
十分に考慮して判断すべきである。(上記最高裁判決参照)