「いいねー」「いいねー」

スタジオでは楽しそうに踊って言葉を発する誠と杏月の笑顔が眩しく、相手を肯定するような台詞を放つ後輩たちの言葉が今の二人には少し重かった。

けれど、流れてる歌は気まずい空気でさえも吹き飛ぶような空元気な曲で、歌いながら踊っていくうちにマスクとか競馬とかどうでもよくなって普段通り過ごすことに時間はかからなかった。

撮影する目の前では、今回歌を担当した先輩のお兄さんが同席しており、現役時代に手掛けた曲でビジネスを考えていた野望と、当時一緒に組んでいたお姉さんの取り合いをもう一人のお兄さんとしていた下心についてスタッフと一緒に話に花を咲かせていた。


〈完〉