幕府側の開明的知識人に焦点を当てたという点では画期的な作品。

日本の開国を決断して近代化を進めてたのは徳川幕府で、
薩長などの倒幕派は攘夷に狂い内乱を起こした蒙昧なテロ集団。
こうした基本認識にどこまで切り込めるかが
「八重の桜」の成否を分けるポイントだけど、結果は50点。

山本覚馬・八重を発掘し、
象山塾の群像や井伊直弼に肯定的に触れたまでは良かったけど、
いかんせん掘り下げが全然足りない。
前半は通俗的な薩長中心の幕末史を松平容保目線で断片的につないだ内容で、
覚馬、佐久間象山、福沢諭吉などの開明派の視点が抜け落ちており、
そのため、籠城戦へ至る必然性や、
後半の覚馬や新島襄による近代化の意義がぼやけてしまった。

着想は面白いけど、脚本が未消化で、
幕末から明治へ至る近代化のドラマの本質を描ききれなかったことが残念。
幕末史の素人の作家には荷が重すぎたんだと思う。