>>326 より続き

うめが横浜で、ピアノでバッハのメヌエットを弾くのを、窓にかじりついて聞いている。父の与兵衛は怒っているが、そこに外
国人女性が通りかかって与兵衛に注意したので、彼はびっくりして逃げている。ここ何と言うこともないシーンなのだが、「麒
麟がくる」でオリキャラの駒が、全く説得力のない描写でどんどん偉くなっているのを見てしまうと、この「うめの描写」はい
いなと思う。うめは元々三味線が好きで、両親に怒られようが何だろうが家の手伝いもせず、ずーっと三味線を弾いていた。そ
してここではピアノに夢中になっている。「ああこの子は本当に音楽が好きなんだな」というのがわずかなシーンで良く伝わっ
てくると思う(以前はそれほどそんなことは思わなかったのだが。それにしてもあれだけ時間を使いまくっているのに駒描写の
説得力のなさは問題だと思う)。

で、今回は何と言っても吉子(貞芳院)若尾文子の独壇場だった。吉子は諸生党の市川三左衛門、佐藤図書に城下にいる武田耕
雲斎たちを城に入れるように言うが反対され、彼らの話を聞いている内に鉄砲の音が聞こえ戦闘が始まってしまう。吉子は自分
が話をするといい、永原や侍女、市川達にとめられながらも水戸城の城門を開けさせ、話しかける。

それで市川も佐藤図書も無役なのに藩内を取り仕切っているみたいだし、天狗党の方も武田耕雲斎や藤田が「撃つのを止めよ」
と言っても止まらないし(止まったのは吉子が演説をした時だけだった)、本当に統制がとれていないのが良く分かる描写であ
る。さらに江戸にいるからと言うのもあるだろうが、今回一瞬も藩主の慶篤が出てこない(史実の慶篤は病弱だったらしく、吉
子が後見していたらしい)。

続きます