>>374 より続き

この吉子と慶喜のシーンだが、ここのシーンが感動的なのはやはり「慶喜が徳川宗家を救った」ことをきちんと描いてきた
からだろう。それで私は >>363 で慶喜の言っていることは「凄いきれいごと」だと書いたが、この「きれいごと」を上
手に描くのって難しいと思った。それと「きれいごと」と言うのは実際には人には評価されないのだと思う。慶喜はこの母
とのシーン以外で誰にも「よくやった」とは言われていない。敵には恐れられるし(まぁそれは当然だが)、幕臣たちも
「薩長と戦えないこと」が不満で「上様は何故戦ってくれないの?」という事ばかりで、慶喜の考えを正確に理解できたもの
はいなかった(春嶽辺りは理解していたかもしれないが。はっきり口に出しては言わなかったけれども)。これが近年の大河
だと「主人公の意図を皆が理解してくれて、流石○○じゃ!と言ってくれる」という作りになっていることが、薄っぺらくて
白けてしまう原因になっているのだと思う。そう考えると「だれも理解してくれなかった慶喜を理解して褒めてくれたのは母
だけ」というのはリアリティがあり、だからこそこのシーンに感動できるのだと思う。

それにしてもオリキャラのシーンがあったとはいえ、「政治、政治、政治」の大河だった。1年をかけて慶喜の目から見た幕
末、大政奉還をやるとここまで描かなければならないのかという濃密さだった。一般に「幕末が分かりにくい」のは描かなけ
ればなならないことが多すぎて、しかも近年の大河だと「政治を描かない傾向」があったので(「花燃ゆ」「西郷どん」)さ
らに分かりにくくなってしまうのだと思う。本作登場人物に人名のテロップが一々入っていたがこれがないと「えーと誰?」
になってしまうほど登場人物が多く、幕府の役人がしっかりでてきたためこのやり方は良かったと思う。