>>354
本スレでは中園ゆるすまじの意見が多かったけど、あえてNHKを擁護するとしたら、1点ある。
いままで日本でつくられてきた西郷隆盛を描いたドラマは、大なり小なり西郷を美化してきた。
最終的には悲劇の英雄として、その前は日本最初の陸軍大将・維新三傑として、敬われ慕われてきた。
西郷どんの特徴は、その西郷への美化をやめたことね。

そもそも論だが、島流し以前の西郷は、美化できるようなそんなに優秀な人物だったのだろうか?
西郷がかけずり回って実現しようとした、一橋慶喜の将軍擁立は結果として失敗してしまったし、
篤姫輿入れによる大奥への親薩摩派の扶植にも失敗している。
だいたい、この当時の西郷は斉彬公の「御庭番」だ。そして御庭番の仕事は藩主の使い走りに過ぎない。
複数存在していたはずの一介の使い走りが幕末の政局の主役であるはずがなく、そもそも国内外でおきた
事態のすべてを把握できない。全体像を理解していたのは、薩摩では藩主斉彬公ただ一人だっただろう。

全体状況を理解できない田舎者の薩摩侍が、行く先々でドジばかり無駄足ばかりふんでいた姿をエンタメに
してしまったのが西郷どん序盤の展開。歴史年表を描くのをサボった、のではなく、御庭番時代の西郷は
そもそも(後年情報が整理され理解されやすいようまとめられた)歴史年表を知らなかったのだ。

西郷は何も知らない知りたくても分からないという観点で青年西郷を描いたドラマはめずらしい。大河版の
『表層批評宣言』みたいなもんだ。それと、うがったみかたになるかもしれないけど、息子を見る母親のような
視線を西郷どんのシナリオには感じる。母親の視線は往々にして深みがない。息子が何をしているのか
母親は表面的なことしか理解できない。でも、いくらドジを踏んでも息子は息子なのだから、冷たくならず
態度も変えず、息子を愛しつづけ事態を受け止めている、ように感じます。なんか、母の愛だなあと。
でも、そういう観点をそのまんま描いたドラマは日本ではめずらしい。

しかしまあ、どんな描き方をするにも限度があるわけで、維新回天の英傑・西郷隆盛にたいし、よくぞここまで
コケにしてくれたな、うすら馬鹿扱いしやがったな、と思う。真面目な鹿児島県民なら怒り狂って当然だろう。

ただ、大河ドラマはとにかく長いドラマなので、序盤はドジばかりでも、中盤終盤で盛り返すのは充分可能。
可能性が残っているだけで、もしかしたら最初から最後までそれには失敗し続けるかもしれないねえ。

なんか、まとまりのない長文でもうしわけない。でも、斉彬公がなくなったここらが西郷どんの評価をくだすべき
時だろうと思って、とりあえず一筆まとめてみた。