石が能面師になる退場シーンは、今になってみると、そう悪くない気がする。

若い頃は世に出たくて、破天荒に立ち回ってみたものの、結局は自分が求めていたのは藤夜叉とのささやかで穏やかな暮らしに過ぎなかったことに気付き、しかし気付いたときには既に手遅れ。

静かに諦めを噛み締めながら、舞台を降りていくってのは、歳をとった今、身につまされるものがあるわ。