第37回 江戸無血開城
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慶喜が逃げた理由

 それから西郷は、上野の寛永寺で謹慎中の徳川慶喜を訪ねる(フィクションである)。
 慶喜は大坂城から逃げた真意を、西郷に語り始める。前回書いたが、史実では薩長軍が
天皇権威の象徴「錦旗」を掲げたため、慶喜は「朝敵」になるのを恐れて逃げたのだ。
 ところが、ドラマの慶喜は「錦旗」には触れず、フランス・イギリスが内政干渉を
始めようとしたから、逃げるしか無かったのだと語る。要するに、外圧を突っぱねられるのは、
西郷しか居ないと言いたいのだろう。この部分などは「明治維新」の本質を変えてしまうほどの、
かなり重要な改変である。

 僕はドラマが基本的には、フィクションとして楽しめれば良いと考えている。
しかし、それにしても明治150年のNHK大河ドラマで、ここまで変えて良いものかと、
首を傾げざるをえない。

 ともかく納得した西郷は、慶喜を許す。その後、長州の木戸孝允が慶喜征討を主張するが、
西郷と大久保一蔵が反対し、斥ける。
 こうなると、これから東北地方へと拡大してゆく戦火には、どのような大義名分があるのだろうか。
注目していたところ、なんと一方的に「東北諸藩が徹底抗戦」して来たと説明されていた。
平和裡に解決したつもりの西郷は、予想外だったと困惑する。あくまでドラマなのだが、
このままでは戊辰戦争の本質そのものも、違ってしまう。あまりにも西郷中心に都合良く、ドラマが展開する。

 史実では朝敵となった会津藩を討つよう新政府から命じられた仙台藩・米沢藩が、その大義名分を問うたものの、
納得出来る回答が得られなかった。そのため仙台藩などは、薩長の私怨による戦争はないかとの疑いを、強める。
東北諸藩は天皇の権威を振りかざすだけでは、動かなかったのだ。こうして話がこじれにこじれ、
ついには奥羽越列藩同盟が結成され、戦争へと突入するのである。