東京2020の前年で世間はオリンピック一色、朝ドラ「あまちゃん」で好評だった宮藤官九郎に賑やかな脚本を書かせ、当代一の人気歌舞伎役者を主役に、伝説のスポーツ選手を次々と登場させる。
日本スポーツ協会はじめ競技関係者は全面協力、安倍内閣もバックアップ、
あの小うるさい朝日新聞も自分のところの元記者が主人公ではケチを付けにくい――。
どうだ、これでヒットしないわけがないだろう。
NHK幹部はそう考えて、大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(総合日曜午後8時)を企画したに違いない。

 ところが、ある致命的な見落としがあった。いまや、スポーツはテレビ、パソコン・スマホでライブ観戦したら、それで終わり。
昔の選手の活躍や舞台裏をドラマ仕立てで感動するなんてことは、よほどのスポーツマニアでなければ、楽しみ方ではなくなっていたのだ。
主人公の金栗四三も田畑政治も、大方には無名であった。
これで1年間見続けてくれというのは、さすがに無理がある。

 かくて、裏番組の「ポツンと一軒家」(テレビ朝日系)に流れた中高年視聴者は戻ってこず、5・9%と思いもよらない超低視聴率まで陥落した。

 民放でゴールデンタイムのドラマが、視聴率5%台になったら黄信号点滅、3%台で打ち切りだが、大河ではそうもいかない。
どこまで落ちるかがテレビ界の最大関心事という情けないことになっているが、NHK内では「いだてん」の大失敗というだけで済みそうもないという。

「責任が問われそうですが、大河はトップも加わった決定なので、低評価でも、誰かが異動になるということはありません。
ただ、大河ドラマそのものがもう終わったんじゃないかという議論は、強まりそうです」(番組構成作家)

 大河ドラマは平均視聴率20%台が当たり前だったが、この5年は最も高かった「真田丸」でも16・6%だ。やはり、大河神話は崩れつつある。
間接費用や準備も含めれば、1話1億円近くもかけて、池の水を抜いて外来種を追いかけ回すだけのテレビ東京の番組と同程度の視聴率では、
「もうやめようよ」という声が上がるのは当たり前だろう。

 来年の「麒麟がくる」は明智光秀を主人公にした戦国もので、大河ファンが戻ってくると期待できるが、それでも視聴率ひとケタなんていうことになったら、大河ドラマ廃止が本気で検討されそうである。

(コラムニスト・海原かみな)