ペストといえばデカメロン。そしてカミュのそれが世界文学史に輝く。
それほど有名ではないが、命を脅かされた人々の不安心理。合理的、非合理的行動。そして
情報を隠蔽して迷走する政府のルポとしては、宝島で有名なデフォーの手によるペストが驚くほどリアルでお勧め。
350年前の経験は、後世の教訓とするために書き残したと執筆動機を述べるデフォーの言葉通り、
いちいちイマココの我々に痛切に響く。
日本ではもちろん鴨長明の方丈記。これはまさに、清盛が生き疫病が猖獗した平安末期についての
貴重な時代証言である。
汚いと井戸播磨守に酷評された初回の羅城門付近の絵面は、正直、縁遠い別世界の悲惨であったけれど、
2020に至り、疫病に翻弄されるグローバルな人民を待ち受ける最悪の未来図を啓示する光景となった。