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>そうまとめる前に、新選組に話を戻しまして。
>どうして土方を持ち上げて、近藤を落とすようなことをしたのだろう? 新選組について調べていて、司馬遼太郎のエ
>ッセイをみていて、ピンと来ました。
 
>織田信長像にせよ、司馬遼太郎は、日本人でありながら西洋の思想を持つ人間が好きです。土方が優れている理由とし
>て、幕末の日本にありながら、西洋の軍隊における副官のような役割を果たしているところが素晴らしいという趣旨の
>ことが書いてあります。
 
>確かに、副官は重要ではあります。ナポレオン戦争における、ネイとジョミニは有名ですね。
>とはいえ、西洋の軍隊といっても、時代なり国によってかなり異なるものではあるし。副官が参謀の役割を果たすとな
>れば、それこそジョミニくらいのきらめく才能は欲しいところ。土方はそうだったのかどうか? 土方に全てを委ねな
>ければならないほど、近藤は無能だったのか? 
>もしかして、順番が逆なのではないだろうか?
 
>前提条件として、自分がプッシュしたい英雄は、西洋思想の持ち主でなければならない。だから後付けで、史実を曲げ
>てでも、西洋の香りがする英雄を自作で作り上げていったのでは?
>対極にいるのは、漢籍なんぞぶつくさ読んでいる頭のお堅い連中です。近藤勇がそうです。
>どうしてそんなことをするのか?
>その答えは簡単です。【脱亜入欧】――司馬遼太郎が幼少時からどっぷり浸かった思想です。

>西洋が世界を支配する時代が訪れた。けれども、日本は東洋でありながらもその中に入り込めた。そんな【脱亜入欧】
>思想は、自分たちは他の東洋人どもとは違うという、レイシズムを含みつつ、日本人を酔わせてゆきます。いわば毒の
>酒でした。
>第二次世界大戦で敗北して、抜け切るかといえば、そう単純な話でもない。
>アメリカは、鉄のカーテンの向こうにいってしまった中国や北朝鮮に対抗するためにも、日本を取り込みたい。
>第二次世界大戦を“太平洋戦争”と呼んで、“日中戦争”の影を薄くする。東側の中国に、西側日本は頭を下げる必要はな
>いと。西側に引き込むために、名誉白人扱いは継続する。アジア人の中でも特別だからすごいのだとおだて続ければ、
>日本人は参ってしまう。
 
>だって、明治維新以降、そういう自意識のもとで生きてきたのだから。イギリスはしくじったけれど、アメリカはうま
>くやれるさ。二度目だもんな!
>そういう昭和の日本人です。【脱亜入欧】を果たしている日本人像を描かれたら、そりゃ酔いしれますよね。信長が選
>んだ岐阜という地名が中国の故事由来だなんて、捨てていい話です。邪魔だもの。
 
>やっとここまで、【脱亜入欧】までたどりつきました。これが一番いいたかったことかもしれない。レイシズムという
>毒を感じたら、いくら美味だろうと、そんなもの私は飲み込めないのです。

続きます