しばらく魚拓を採っていなかったのですが(3記事を飛ばしてます)、小檜山「この歴史漫画が熱い!」シリーズの最新作です(半角スペースの処理はいつもどおりでお願いします)。

●「『鬼滅の刃』珠世〜大正時代の女医が現代リケジョの呪縛を打ち砕く」(2020/10/15)
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1ページ目からジェンダー論満載で「読みごたえ」がありますが、変だと思う部分をいくつか。

【明治日本は、諸外国の制度を参考にします。その中で有名なものがナポレオン法典。法体系としては優れているとされたものの、ジェンダーにおいて大問題がありました。ナポレオンの出身は、イタリアに地理的に近く、男尊女卑の気風が強かったコルシカです。そんなコルシカ流の女性観を政治に反映したため、女性の権利はむしろブルボン朝時代より後退したと指摘されます。】
→ ナポレオン法典を大幅に取り入れたものは旧刑法(明治41年に全面改正)、治罪法(刑事訴訟法に相当するが昭和23年に全面改正され、現在のものとは比較不能)くらいのはずです。
 女性の人権に関わりの深い民法・民事訴訟法・商法については、紆余曲折はあったものの、ナポレオン法典の流れをくむとはいえないと思います。

【・女性天皇・女系天皇の廃止  当時の大英帝国はむしろヴィクトリア女王の華やかな最盛期。それなのに、どういうわけか女性天皇、女系天皇への道を閉ざしました。】
→ 法制化(明文化)されたのは明治期かもしれませんが、通常の意味での「女系天皇」はそれ以前からなかったはず。

【・夫婦同姓  これも明治以降です。】
→ 「氏姓制度」を厳密な意味で捉えるならともかく、苗字レベル・夫のイエに属するといったレベルなら、明治以前からの慣習のはずです。

【・身を売る境遇に落とす女性もいる/娼婦への目線につきまとう自己責任論  明治維新の結果、負け組となった側が家を養うために身を落とすことも。『鬼滅の刃』には遊郭がきっちり出てきていますね。楽しいけれども、女装した炭治郎のような少女すら人身売買されていたということです。】
→ 項目の前半が明治以前からというツッコミはおくとしても、項目と説明が一致していないような・・・?どこが「自己責任論」?

【引用開始】
1960年代に消えた日本の「売血」のように、2020年代という時代において、消えてもよい概念もあるはず。それが“リケジョ”ではないでしょうか。
『鬼滅の刃』連載前夜2010年代半ばには、STAP細胞をめぐる騒動がありました。
(注・佐藤優氏執筆記事へのリンク)◆ 「STAP細胞はあります」から4年、地獄をさまよった小保方氏の今
あの騒動は、報道が異常であり、かつ理系女性が置かれる状況の過酷さを見せるようなものがありました。割烹着だの、身に付けるアクセサリだの。キャラクターとして消費しようという意識が先走ってしまい、どうしたって関係者に不可解な印象がつきまといました。
【引用終了】
一部の問題意識は共有できますが、基本的にSTAP細胞の問題は研究不正に関わること。男女は関係ない。ちなみにあのとき熱心に小保方氏を批判していた日本分子生物学会の理事長は大隅典子さんという女性でした。
また、学位論文からSTAP論文への写真の流用が11jigenというブロガーによって明らかになった際に、twitterで先陣をきって批判していたのは野尻美保子さんとおっしゃる女性物理学者です。
リンク先の佐藤氏の記事については、感情論の域を脱していないものとみました。
ちなみに個人的には、佐藤氏について、専門のロシア政治や対露外交については一定の参考にはしているものの、著作でキリスト教についてとんでもない間違いを仕出かしているのを読んで以来、専門外のことについては信用していません。

〔続きます〕