阿部サダヲの信西起用は、愚管抄が伝える「算木を動かしながら朗々と〈甲高い声〉で計算する」信西に
着眼したものだ(徹夜で精勤する姿がきちんと描かれた)。
声質に加えて、コミカルからシリアスまで振り幅の大きなキャラであったことも、阿部サダヲに相応しい
(初期のコミカルさを出せることが不可欠)。

落っこちた穴の中から「誰でも良ーい。誰でも良いから助けてくれ」と清盛に呼びかけた信西は、
身分の壁に阻まれて学識を発揮する機会を持てずに自虐気味の通憲から出発した〜コミカル信西。
その後、出家入道になることで活路を開いた信西は、鳥羽近臣として徐々に辣腕を振るい始め、遂に雅仁を
帝位につけることに成功した〜マキャベリスト信西。
そして邪魔となる頼長、崇徳を排除すべく彼らを挑発。遂に勃発した保元の乱を仕切って勝利し、無慈悲な死刑を復活した
〜ダーク信西。
信西はようやく掴んだ権力を、不眠不休の覚悟でひたすら国事に捧げて諸改革を断行した〜国士信西。
しかし、その強引な政治姿勢は保守派貴族の怨みを買い、反信西包囲網の構築を許してしまった(vs信頼&二条親政派)。
最後は、穴の中から清盛その人を求める悲痛な叫びを上げながら(「清盛殿助けてくれ!」cf出会いの穴でのトボけた
「誰でも良ーい」)、この稀代のしかし知られざる宰相信西は呆気なく滅んだーシリアス信西。