【美貌】だけでなく、物怖じしない【強い性格】の持ち主であり(女官からのパワハラにビクともせず)、
危うい均衡のもとに成り立っていた二頭政治の【バランサー】として政治的にも重要な役割を担った
(後白河に寄り添い気まぐれを抑える。不満を抱く西光、成親と酒を酌み交わし宥める【気配り上手】
←徳利と遊ぶ少女滋子を早い段階で登場させる入念な段取りにより、著名な【酒豪】ぶりも描かれた。
内大臣昇進や徳子入内では清盛の意を受けて後白河に働きかける【平氏の利害関係者】として振る舞った)。
さらに、憲仁(高倉)立太子に向けて兄時忠を焚きつけるなど(平氏の財力を使え・・)【フィクサー】的な動きも見せた(表の政治を動かす)。
そして、滋子の死は即、これらの均衡の破壊を意味し、時代は一気に鹿ヶ谷の破局へと雪崩れ込んでゆく。
このように平清盛は、滋子の人物造形及び政治的役割双方に対して、歴史上の滋子に即した極めて的確な描写がなされていた。
アッカンベーから国母まで、「気を衒った」「愚劣」どころか、滋子のど真ん中に切り込んだんだよ。

要するに「巻毛がー」を言いたいのだろうが、
・ストレートの長髪が当時の「美女の規範」であったこと。しかし、そのような生物的な条件は全員が備わっている
ものではなく、
貴族の娘たちの間では「鬘」が流行した(小林「王朝の歌人たち」。「美女」が皆、地でストレートだった
わけではなかったのだ~無知ではなく、当時の支配的な規範への理解が作劇の前提)。
・平氏一門も入内に備えて巻毛を直そうと必死となった~女官からのイジメに言い返した滋子本人も弱気。
・皆が問題視する中、当の後白河は何も意に介さないどころか、これを積極的に滋子の個性と認めた
(タブー嫌いと珍しもの好きの性格描写)。
・何よりも、「正すべきは巻毛ではなく、巻毛を醜いとする古来からの悪しき因習だ」と言い放ち、
社会の側の偏見へと目を向けさせる清盛の真骨頂を引き出した(逆転の発想)。
・かくして「好奇心と迷信嫌いの点で好一対」(高橋)の両者は、後に2人の間を取り持つ滋子の巻毛を媒介として
対立しつつも協調する提携関係に入った(平治の乱後の政治の枠組みがここで成立)。

★巻毛を通じた滋子の人物造型と彼女の個性を媒介とする清盛vs(&)後白河描写は、平治の乱後の政治過程と
歴史展開をいっそう豊かなものとした。巻毛もまた冴えを見せつけたアイテムなのである。