平成16年(2004)に放送の〈新選組!〉は、香取慎吾演じる主人公の近藤勇が、実は京都に上る前から坂本龍馬と親しい友人だったという「設定」だった。

これはもちろんフィクションだが、いち早く新聞、雑誌などがこの「設定」に反応し、さまざま識者が「史実と違う」と発言したためか、
〈新選組!〉には史実をないがしろにするデタラメなドラマだというイメージがついてしまった。

確かに近藤と龍馬が友人だったことを示す資料や記録はない。しかし両者に接点はなかったのか、知り合いであった可能性は本当にゼロなのか。

龍馬にしても近藤にしても、当時、黒船来航以来の国難によって覚醒した青年たちだった。
彼らは剣術で腕をみがき、社会情勢に注目し、最先端の尊王攘夷思想を掲げるオピニオンリーダーでもあった。
彼らは互いの交流の中で切磋琢磨し、人脈を築いていった。とすれば、彼らが友人だったという「設定」は、けっして突拍子もないデタラメなどではないのだ。

従来、龍馬と近藤は「好敵手」として扱われてきた。
だから友人だったとする「設定」に違和感が持たれ、「時代考証がなってない」とされたわけだが、より深く歴史を理解するならば、それが「あったかもしれない」可能性が見えてくる。