なつぞら119話感想より

>なつが帰宅すると、エプロン姿のイッキュウさんが迎えます。また指を切りつつ、食事を作っていたそうです。

>「慣れたから!」「指を切ることに慣れないで」そのやりとりのあと、イッキュウさんは心配します。
>「顔色が悪い……」「ちょっといい?」椅子に座り、夫妻は向き合います。

>なつは仕事中、貧血を起こして倒れたと言います。そのあと医者に行ったら……。「できてた。赤ちゃん。赤ちゃんが、できてた」
>「よかったじゃないか」「本当に? イッキュウさんはうれしいの?」
>「うれしいよ……きみはうれしくないのか?」「うれしいよ……」
>素直に喜ぶイッキュウさん。一方で、そうできないのがなつです。

>うれしくないわけじゃない。お医者さんに言われた瞬間は、信じられないくらい嬉しい気持ちになった。
>だけど、これからどうするのか? 仕事を辞めるわけにはいかない。「やめたくないよ……」

>金銭的な話だけでもないんですよね。夢も。同僚も。技術も。 辞めるということは、それを捨てることでもある。
>でも、イッキュウさんは迷わないんだ。
>「できた以上は、産まないという選択肢はないだろ、僕たちに。だったら、そんなことはとても小さなことだ。きみが、母親にな
るってことに比べたら」
>「やっぱり仕事より大事ってこと?」
>「そうじゃない。産むと覚悟を決めて、仕事のことは考えればいいと思っているんだ、一緒に考えよう」

>覚悟の問題にしおった。泰樹も求めた、覚悟だ!

>「一緒に?」
>「幸い僕は今家で働いているわけだし、君を支えることができると思うんだ。契約になっても、仕事を好きなだけ続ければいい。
>会社が仕事を認めれば、他の女性も働きやすくなる。子供を育てながら兄メーターを続ければ、それも戦いになる。きみが、その
>道を続けるんだ。そういう開拓精神が、きみにはあるはずだ。いっしょにがんばろう!」
>「じゃあ、喜んでいいのね?」「当たり前だ!」「ありがとう」「こちらこそ」

>おめでとう、なつよ、笑って母になれ――。父が万感の思いでそう告げる、そんな出発点でした。

>ドクン……鼓動がかすかに聞こえて来ます。
>この流れをふまえて、当時の【普通の】男性としてはありえないという意見もあるでしょう。【普通】じゃなくて、彼個人がどう
>なのか。そこが問題の本質なのです。

続きます