20回

足利軍が近江・不破の関にさしかかると、関は佐々木道誉の兵達によって閉ざされており、近づくと
矢を射てくると物見が報告してくる。さて は妨害する気か、と見た直義と師直は陣を敷いて軍議を行
おうと進言するが、高氏は「兵を一里ほど下げよ」と命じ、「判官殿に挨拶に行ってくる」と師直とわず
かの兵だけを連れて関所へと向かう。高氏が館の中を探し回ると、派手な鎧を身にまとった道誉が
待っていた。「鎌倉殿の命でな、足利殿に備えていた」と言う道誉。身内だけでは乱を鎮められず外
様の足利を使うとは北条もぶざま、と道誉が言うと、「その北条にまだ未練を持っている御辺もなか
なかのぶざまじゃ」と高氏がからかう。「そのぶざまな田舎大名に助けを借りねば鎌倉を攻められぬ
源氏の大将もおるでな!」とやり返す道誉。しかし高氏は「鎌倉を攻めるつもりはない」と答え、地
図が書かれた屏風を取り外す。するとその陰には刺客が隠れていた。すわ気づかれた、と他の場所
からも刺客が飛び出す。しかし高氏は気にもせず、屏風を倒して道誉に戦略を説明し始める。

高氏の戦略とは、鎌倉ではなく、京の六波羅探題を攻め落とすことだった。北条は手も足も畿内に
送り込んでしまった。六波羅を落とせば、鎌倉は頭だけで死んだも同然であると高氏は説く。「兵を
貸せとは言わん。ただ黙ってここを通してくれればよい」と高氏は道誉に頼む。「これからのまつりご
とは、京で行わねばならぬ。朝廷もある、商人もいる、楠木殿のような武士もいる。それゆえ、まず京
を攻める」と高氏は将来の構想までも道誉に明かす。聞いた道誉は「面白い!」と叫んで刺客達を
下がらせる。「兵が足りぬだの鎌倉は攻めにくいだの言うようなら首を刎ねて献上してやろうと思って
いたが…面白いのう」と本気で感心している道誉。「ただ一つだけ気に入らん。このわしにただ見て
おれというのが気に入らん。一緒に連れて行け」と道誉が言うと、高氏は気取った風に「それもよか
ろう。苦しかるまい」と扇子を道誉に突きつける。顔を見合わせて大笑いする道誉と高氏。こうして
高氏は不破の関を突破した。