【鳥羽・伏見の戦いとか大坂→江戸の逃亡話とか戊辰戦争とか、一連の出来事を語った慶喜の話を、史実認定する真っ当な書籍なんてありません。調べればすぐわかるウソ。
 それをNHKが受信料で流すのですから絶望的です。大河ドラマがついに一線を越えてしまったと言いましょうか。もしも後世『大河はいつからこんなことになったのか?』と問われたら、2021年12月12日だと明確に答えられるほどです。】(2ページ目)
 → 『徳川慶喜公伝』や渋沢栄一の述懐を鵜呑みにすることは慎むべきだが、ここまで断定口調で語るライターは珍しいのではないか?

 【日中戦争時に連載された小説に、吉川英治『三国志』があります。あれは掲載時期があの時代なのに、中国への悪い感情がないとされます。それも当然。当時の日本人からすればこうなる。
  「中国の英雄であるこいつらは俺のもの!『三国志』は大東亜盟主である俺らのもの!」
  実際、諸葛亮を讃える『秋風落五丈原』が明治時代には軍歌として大流行し、諸葛亮が日本人が愛する英雄にされているわけです。しかもありのままの諸葛亮でなく、日本人好みにカスタマイズされて、奪ったような扱いでした。】(2ページ目)
 → 遂に吉川英治や土井晩翠にも喧嘩を売り始めた武者氏。なお「秋風落五丈原」との間違いはお約束なので気にしてはいけない。また「星落秋風五丈原」自体は軍歌ではない。

 【日露戦争は勝利――この辺りもバルチック艦隊撃破だのなんだの、『坂の上の雲』を思い出しつつ語る人が多そうです。それでも本作で、ジックリ描けない理由は推定できます。
  実態は、パークスはじめ英国にオラオラされていたのであり、それをそのまま描くと『坂の上の雲』由来のロマンスまでぶっ壊れていまいます。
  さらに日露戦争が経済的にギリギリだとわかると「渋沢栄一の経済政策がお粗末だったのでは?」とバレてしまう。そして最大の理由は……。世界史で「日露戦争とは何か?」と問われたら、日本が朝鮮半島に乗り出す契機とされます。】(3ページ目)
 → パークスは明治16(1883)年に駐清公使へ転出、明治18(1885)年に死没。イギリスが日本に対露戦争を積極的にけしかけたという根拠は何?日露戦争による政府財政の逼迫がなぜ民間人渋沢栄一の「経済政策」のお粗末さに繋がるのか?
  日露戦争の結果として日本の大陸政策に拍車がかかったことは事実としても、武者氏の文章には「結果」と「目的」との混同があるように思える。

 【『週刊金曜日』の連載で、何が行われていたかが扱われております。『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』もおすすめです。大河がいくらそこをスルーしようが、誤魔化しきれるかどうか。】(3ページ目)
→ 思想的にかなり偏りのある雑誌の大学生による連載を基礎として歴史を評価することには慎重であるべきだ。