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>二人は縁側で語ります。直子は、布袋の魅力について。大卒、商才あり、要領もいい。賢いねん。
>おっ? ちょっと既視感があるというか、スペック的にはあの敏春に近いものを感じるで。

>しかしここから先に、両者の違いがあります。
>賢さゆえに、布袋は最初反対してきたことがある。それは骨髄移植、ドナーになること。検査しに行こうという朝、「もし一致し
>たらドナーになる覚悟はあるんか? それがどういうことかわかったんのか?」と聞いてきたのです。
>喜美子は「危険性については言うた」と念押ししています。
>直子は、賢い布袋さんはもっと詳しく調べた、そのうえで骨髄移植するんはどれだけの大事か知ったのだろうと推察しています。

>そんな彼に対して直子は「一致するかどうかわからん」と反論。布袋も「わかってからやめます、言うわけにはいかん。それこそ偽
>善や」と返すのです。

>骨髄バンクについて描かれないことは、本作の惜しまれる点ではあります。
>ただ、2020年現在ともなりますと、ドナーは順調に増えていて、武志の時代よりも恵まれた状況にはなっています。圭介の言葉が
>実現しつつあるのです。

>問題は医学ではない。人の意識です。
>型が一致して、提供される側が大喜びで待っているのに、提供側が断ってしまう。大変なことです。
>こういうことは残念ながらまだまだ多い。その原因は、ドナー本人のこともあるとはいえ【周囲の無理解】があります。この場合は布
>袋ですね。

・骨髄移植の重要性、意図がわかっていない
・職場で穴を開けられたら困る(給与面、業務面での問題)
・リスクを必要以上に恐れること

>医学面でのリスクがゼロとは言い切れないものの、そこはかなり丁寧な措置がなされてはいます。
>それよりも、仕事に穴が開けられるということへの拒否感がありまして。
>人の命がかかっていると言われても、何百キロも離れた見知らぬ誰かより、目の前の売り上げを重視してしまうことは、人として
>ある意味仕方ないことかもしれません。
>まだまだ骨髄移植の重要性への理解が足りない。技術が追いついても啓蒙が足りない。
>そういうドナーが直面しかねない問題を、直子を通して描くことは非常に重要であると思います。

>そしてこの、セリフだけしか出てこない布袋の設定も秀逸でして。
>なまじ高学歴で、肩書きもあって、誰も意見に反対しないで生きていると、当人のアップデートができなくなってしまうのです。
>医学知識は進歩しているとか。あんたが仕入れた情報は古いとか。
>説得しようにも、通じないものがあるのでしょう。感情に寄り添う、優しい敏春との違いはこの点なのです。ほんまに敏春は、気
>取りのないええ人やで。

続きます