殿上闇討ちで偉大な忠盛の大望を知り一皮むけ、兎丸とのタイマン対決では「俺は武士だからだ、平氏の男だからだ」とすっかり自我危機を脱した清盛。
ところが、その後も王家と朝廷(ちゃんと区別されていることに注意)に媚びへつらい、公卿になること(体制内出世)に執着しているようにしか見えない忠盛と
対立を深める朝廷内勢力のどちらにつくかばかりを議論する一門に、体制を乗り越えることをもって自らが求める武士の生き方と決めた清盛は失望と不信を深めた。
武力・財力を駆使して強訴を撃退しても、貴族たちが喜ぶ威信財を数多寄進しても、鳥羽は一線を越えて報いるつもりはなく忠盛を公卿に立てる気がない。
一方、毒々しい王家ドロドロ劇場は果てしなく続き、肝心の政治は不在のままだ(頼長激おこ)。あまつさえ明子は、
いわば自分たちの栄華と欲望のために財を独占するばかりで民への恩恵など一顧だにしない偏波な経済構造の犠牲になったようなものだ
(と清盛は考えた〜入手できない宋の治療薬。cf師匠の通憲は海賊跋扈を人災と捉えた)。
これでは平氏は王家の犬からまったく脱却してないではないか!しかも父上が尻尾を振り媚びる相手はこんな腐った奴らばかりだ!
こういう絶望的な状況を目の当たりにした清盛が、深謀遠慮により周到な作戦を立てて実行しつつある忠盛の真意
(ただ忠盛自身公卿を大目標としていたことは確かで、忠盛自身が抱えていた限界を乗り越えていったのが清盛)を完全には理解できず、
3歩進んで2歩下がる遅々たる歩みをなおやめなかったのには十分な理由があった。
「いつまでたっても青臭い幼稚な厨二清盛」と一括りにして裁断しては、段取りを踏んでゆっくりと着実に進行していった清盛の成長を見誤ってしまう。
覚醒後すいすい階段を上っていく英雄清盛ではなく、保元の乱という過酷体験までは、視聴者をイライラさせたこのまだるっこい3歩進んで2歩下がる
試行錯誤を繰り返す清盛こそが、清盛成長物語の真骨頂だと思う。